ハリー・ポッターと賢者の石 第6章

ハグリッドといっしょにダイアゴン横町へ行ってから、1ヶ月がたった。映画では省略されているが、ハリーはこの1ヶ月をダーズリー家で過ごしている。ダーズリー親子はハリーを恐れながらも無視していた。
ハグリッドに買ってもらったふくろうに、ハリーは魔法史の教科書で見つけたヘドウィグという名をつける。原文では he had dicided to call her Hedwig となっていて、読者はこのふくろうが雌だと知るのだが、日本語訳ではわからない。もしわたしが翻訳するのなら、ここで「雌のふくろう」というような表現を使ってことばを補うだろう。原文の読者と訳文の読者が同じタイミングで情報を共有するためだ。その代わり、witch and wizard は単に「魔法使い」とする。

出発の前日、ハリーは「ロンドンまで車で送ってほしい」とバーノンに頼む。
ここでわたしは違和感を持った。サリー州ならロンドンは近いはず。11歳にもなって、ひとりで行けないのか? 日本で言えば、横浜から東京へ行くぐらいの距離だろう。いや、もっと近いかもしれない。
そういえば、バーノンは夏休みが始まる時に毎年ハリーを駅へ迎えに来ている。イギリスでは日本ほど鉄道網が発達していなくて、車でないとキングズ・クロスへ行けないという事情があるのだろうか。

駅でハリーはウィーズリー家の面々と会い、ウィーズリー夫人に教えられて9と4分の3番線に来る。このネーミングは大好きだ。9番線と10番線の間に、マグルに見えないホームがあるという設定がおもしろい。
ところで、ホグワーツの生徒は全員このホームから出発するのだろうか? ロンドンまで出てきたら遠回りになる子もいるはずだけれど。

ハリーはウィーズリー家のメンバーのほか、ネビルとその祖母やリー・ジョーダンに出会う。列車の中ではロンと同じコンパートメントに座る。ハーマイオニーと知り合い、ドラコとも再会する。短い描写のなかに、ウィーズリー家の経済状況、双子の性格、ドラコやハーマイオニーの性格もきちんと書き込まれている。処女作とは思えない巧みさだ。
ハーマイオニーのせりふに「運転手」が出てくるので、この列車には運転手がいるとわかる。魔法で自動運転しているのではないらしい。
また、ダンブルドアがグリフィンドール寮出身ということが、ハーマイオニーのせりふでわかる。「賢者の石」ラスト近くで、ダンブルドアは露骨なグリフィンドールひいきをするが、自分がその寮にいたからだろうか。校長にあるまじきふるまいだ。

ホグワーツの駅(「ホグズミード駅」という名前は、この巻には出てこない)についたハリーはハグリッドと再会し、ボートに乗って城へ。一年生のみんなが初めて目にするホグワーツ校だ。ボートは、漕がなくても魔法で進むらしい。
ところで、なぜ一年生だけ別ルートなのだろうか? 理由は最後までわからなかった。