ハリー・ポッターと死の秘宝(第30章後半)

「カロー兄妹はどこだ?」とスネイプが静かな声で聞き、「あなたが指示した場所だと思いますね」とマクゴナガルが冷静に答える。緊迫した場面なのに、それぞれが内心の興奮を抑えてやりとりするところがすごい。

スネイプはマクゴナガルを見透かすようにあたりに視線を走らせた。「まるでハリーがそこにいるのを知っているかのようだ」と書かれている。アレクトの合図がハリーを捕らえた知らせだと、スネイプも知っているのだろう。

その直後、マクゴナガルがスネイプを攻撃し、スネイプが盾の呪文でそれを防ぐ。マクゴナガルは火を使い、火は蛇になり、また手裏剣の雨になってスネイプを襲う。スネイプはその場に飾られていた甲冑で防ぐ。最初にここを読んだときは、マクゴナガルの戦闘力にスネイプが押され気味のように見えた。しかし結末を知ってから読み返すと、スネイプは反撃しようと思えばできたのに、マクゴナガルを傷つけないためにわざと防戦一方なのだとわかる。

フリットウィック、スプラウト、スラグホーンが駆けつけてきた。
「これ以上、ホグワーツで人を殺めるな」とフリットウィック。ダンブルドア前校長のことを言っているのだろう。

三人の寮監に追われてスネイプは逃げ出し、窓ガラスを割って飛び降りた。
スネイプは巨大なこうもりのように、塀の外へ向かって飛んでいた。5章に、ヴォルデモートが飛べることに騎士団メンバーが驚いている場面があったが、スネイプも飛べることがここでわかる。そして最後まで読んでも、ほうきもセストラルもなしで飛べるのはこのふたりだけだ。

マクゴナガル先生は、三人の寮監に言った。
「名前を言ってはいけないあの人がやってきます」
「ポッターはダンブルドアの命令で、この城でやるべきことがあります。ポッターが必要なことをしている間、私たちは、能力の及ぶあらゆる防御を、この城に施す必要があります」
ハリーが具体的な説明をしていいないのに、これだけ適切な表現でしかも簡潔に説明するマクゴナガルはすごい。いや、マクゴナガルをそんなふうに描いている原作者がすごい。

城に防御術をかけ始めたフリットウィックに、ハリーは話しかけた。レイブンクローの首飾りを知っているかと。とっくの昔に失われ、生きている者の記憶にある限りでは、誰も見たものはないという返事が返ってきた。

「二十分後に生徒たち全員と大広間で」とマクゴナガルは他の寮監に指示。マクゴナガルは呪文を唱え、城中の石像や甲冑を動かし、その上でグリフィンドール生を起こしに行った。

ハリーとルーナは必要の部屋に戻った。
人数がさらに増えていた。キングズリー、ルーピン、ウィーズリー夫妻、ビル、フラーはわかる。騎士団のメンバーなのだから。しかし、オリバー・ウッドやアンジェリーナ、ケイテイ・ビル、アリシア・スピネットまでが… フレッドとジョージが呼んだのだ。
そこへパーシーがやってきた。パーシーは少し前から家族のもとに戻りたいと思っていたが、やっと実行に移せたのだ。

ところが、肝心のロンとハーマイオニーがいない。彼らは「秘密の部屋」へバジリスクの牙を取りに行ったのだが、この時点では誰も知らない。
映画では、ハリーにことわってから行くようだが、その方がいいと思う。この肝心なときに、ハリーに黙って二人が姿を消すなんて不自然だ。

ハリーの意識がまたヴォルデモートとつながった。
ヴォルデモートはナギニを肩に載せ、ホグワーツの正門の前に立っていた。