はりー・ポッターと死の秘宝(第30章前半)
アレクトの指が闇の印に触れたとたん、ハリーはヴォルデモートの心とつながった。
ハリーがヴォルデモートの視点になるきっかけはひとつではないと思うが、このときは「ハリーを捕らえた」という知らせに喜んだ、つまり心の高ぶりがきっかけになったようだ。
バーンという大きな音がした。ルーナが失神呪文をかけ、アレクトが倒れたのだ。
ハリーはあわてて、ルーナがかぶっている透明マントに自分も隠れた。音に目を覚ましたレイブンクロー生が集まってきた。
一方、ハリーの頭の中では、ヴォルデモートが洞窟に着いていた。ロケットが無事かどうかを見にきたのだ。
いきなり、談話室の扉を激しく叩く音がした。アレクトの兄アミカスだった。どうしたらいいか考えていると、今度はマクゴナガル先生の声がした。
マクゴナガルがワシのノッカーの問いに答え、扉が開いた。
部屋に入ったアミカスが倒れているアレクトを見つけて、「ガキども、何しやがった?」と怒るのはわかる。
しかし「ガキどもが妹を殺しやがった」というせりふは腑に落ちない。身内が意識を失って倒れているのを見て、死んでいると短絡的に思う人はいないんじゃないだろうか。何かの理由で気を失っているだけと思いたいのが人情じゃないのか? 死喰い人であろうとなかろうとそれは同じだと思うのだが。
それはともかく、冷静にアレクトを調べたマクゴナガルが「失神させられているだけですよ」と告げる。
このとき、レイブンクローの生徒たちは寝室へ逃げ帰っていた。
ここでのアミカスのせりふから、ハリーがレイブンクロー寮へ来る可能性をヴォルデモートが考えていたこと、アレクトが「ポッターを捕まえた」とヴォルデモートにすでに知らせたことがわかる。
アミカスは、アレクトが生徒たちに襲われ、無理やり闇の印を押すことを強要されたという筋書きをヴォルデモートに報告しようと考える。開心術の名人に嘘をつくのは無謀なことだと思うのだが。
ここでハリーのかんしゃく持ちの性格が出てしまう。マントを脱ぎ、アミカスに磔の呪文をかけたのだ。
この呪文は本気にならないと効果が出ないというベラトリックスのことばを、ここでハリーは実感する。
ルーナもマントから出る。
ふたりの出現に驚愕したマクゴナガルだが、ヴォルデモートがもうすぐやってくると聞き、ハリーに逃げるよう勧める。
ハリーは、この場内で探さなければならない物があると打ち明ける。
アミカスの意識が戻りそうになるが、マクゴナガルは魔法で相手を従わせ、兄妹ともにしばりあげる。
マクゴナガルの決断の早さに少し驚いた。ハリーの話があまりにも漠然としているのに、それを信じて学校全体で対応しようというのだ。
生徒たちをまず逃がさなければならない。そう考えたマクゴナガルに、ハリーはホッグズ・ヘッドへの通路について説明した。
守護霊を複数出すことができるのだと、読者は初めて知る。おそらく、腕の良い魔法使いだけができることなのだろう。
しばらく階段や廊下を進んで行くと、誰かの気配がした。
スネイプが姿を現した。