ハリー・ポッターと死の秘宝(第31章後半)

ハリーがネビルの祖母に会うのは二度目だ。
「不死鳥の騎士団」で病院にアーサーを見舞ったとき、ハリーたち三人はネビルの祖母に会っている。そういえば、マクゴナガル先生は彼女を「オーガスタ」とファーストネームで呼んでいた。ひょっとして同時期にホグワーツに在学していたのだろうか。
オーガスタ・ロングボトムは、ホッグズ・ヘッドへの通路を封鎖したと告げ、ネビルに加勢するために走り去った。

トンクスは「あの人の様子がわからないのに耐えられなくて」と言う。息子は母のアンドロメダに預けてきたそうだ。トンクスは「母」であることより「妻」であることを選んだのだ。いや、「妻」であると同時に、プロの闇払いであり騎士団のメンバーであることを、「母」という立場より優先したのかもしれない。
トンクスも、夫といっしょに戦うために走り去った。
話は変わるが、現在ルーピンの脱狼薬は誰が作っているのだろう。妻のトンクスか? 闇払いになれたのだから、学生時代の魔法薬学の成績はそこそこ良いものだったに違いない。

残ったジニーに、ハリーは「少しの間外へ出ていてほしい」と頼んだ。必要の部屋が「物の隠し場所」になるためには、一度部屋を空っぽにしなければならないからだ。もっとも、そのルールをハリーがどうして知ったのかはわからないが。

そのときロンが「屋敷妖精たちに、脱出するように言わないといけない」と言い出した。
それを聞いたとたん、ハーマイオニーバジリスクの牙を手から落とし、ロンに熱烈なキスをした。ロンもキスを返した。
甘い恋のささやきに応じてキスをするのではなく、屋敷妖精を守りたいという自分の考えに賛成してくれたことを喜んでキスをする。そこがいかにもハーマイオニーらしい。

ハリーは必要の部屋の前で「すべての物が隠されている部屋が必要だ」と念じながら壁の前を三度通り過ぎた。扉が現れ、何世紀にもわたって生徒たち隠した品物が積み重なった部屋が出現した。
三人は手分けをして髪飾りを探した。黒ずんだティアラがハリーの目に入ったとき、背後から声がした。クラッブとゴイルを従えたドラコだった。
クラッブとドラコのやりとりから、ふたりの間に信頼関係などなかったことがわかる。クラッブは、そしておそらくゴイルも、マルフォイ家の名声と富に頭を下げていただけだったのだ。

ドラコは、ハリーたちが髪飾りを探していることを知っていた。さっきハーマイオニーが「アクシオ、髪飾り」と大声で唱えたが、それを聞いていたのだろう。
クラッブがハリーにクルーシオの呪文をかけ、さらにハーマイオニーにアバダ・ケダブラの呪文をかけた。ハーマイオニーは横っ飛びに交わした。ここでハリーの悪いくせが出る。ハリーはティアラのことが頭から吹っ飛び、クラッブめがけて失神の呪文を放った。
「炎のゴブレット」で偽ムーディが言っていたことが事実なら、クラッブごときの魔法力でアバダケダブラが効果を持つとは思えないのだが。

そこへ、炎が襲ってきた。アグアメンティの呪文で水を出しても炎は衰えなかった。炎から逃げ惑いながら、ハリーはほうきを二本見つけ、ロンにも一本投げた。ロンはハーマイオニーを後ろに乗せた。ハリーはドラコを助けようとした。ロンの「そいつらのために僕たちが死ぬことになったら、君を殺すぞ、ハリー」というせりふは理屈に合わないが、笑うところではないだろう。

ロンとハーマイオニーはゴイルを自分たちのほうきに引っ張り上げ、ドラコはハリーのほうきに這い上がった。ドラコが「扉だ。扉に行け」と叫んだ。
このときハリーは、ティアラが炎に巻き上げられて飛んでいるのを見た。ハリーはほうきをあやつってティアラを手首に引っ掛け、扉があると思われる方向へ飛んだ。危ういところで廊下に飛び出すことができた。髪飾りはハリーの手の中で二つに割れた。
必要の部屋の火事は「悪霊の火」だったと、ハーマイオニーが言った。分霊箱を破壊する能力を持つ魔法物質のひとつだった。クラッブは結局火に巻かれて死んだが、結果的には彼が悪霊の火で分霊箱を破壊したのだ。

気づくと、死喰い人が城内に侵入していた。
フレッドとパーシーが、フードを被った死喰い人と戦っていた。フードが外れると、相手はなんと魔法大臣のシックネスだった。こんなとき、大臣自ら戦いの場に出てくるなんて不自然じゃないか、と読んでいて思った。
そのとき、爆発が起こった。ハリーは体が飛ばされるのを感じた。城壁が壊され、ハリーは体の半身ががれきに埋まっていた。ハーマイオニーもがれきの中から立ち上がった。

壁が吹き飛ばされた場所で、フレッドが倒れていた。パーシーがフレッドを揺さぶり、ロンがその横にいた。「最後の笑いの名残がその?に刻まれたままだった」と書かれているのは、フレッドが全く苦痛を感じることなく亡くなったことを示している。

この戦いでは五十人を超す死者が出たが、ハリーは最初に見た戦死者はフレッドだった。その前にクラッブが死んでいるが、ハリーは直接死体を見ていない。
フレッドとジョージは、何をするにも一緒で一心同体だった。ジョージにとっては、単に兄弟を失っただけの悲しみではなく、半身をもぎ取られたような苦しみだったに違いない。