ハリー・ポッターと謎のプリンス(第21章)

どうやったらスラグホーンから記憶を引き出せるか。
ハリーは答を求めて、プリンスの教科書の書き込みをさがす。問題は呪文や魔法でなく、スラグホーンの心情に訴えることだとハーマイオニーは理解しているが、肝心のハリーにはそれがわからない。
プリンスの教科書の中に「敵に対して」というコメントと共にセクタムセンプラの呪文が書かれていた。「ハリーは使ってみたくてうずうずしていたが、ハーマイオニーの前ではやめた方がいいと思った」と書かれている。ここを初めて読んだとき、セクタムセンプラがどんなに危険かはもちろん知らなかったが、未知の呪文を安易に使おうとしているハリーにはかなり腹が立った。

寮のみんなが寝室をひきあげ、ハリーたち三人だけになったとき、クリーチャーとドビーが姿あらわしで談話室に出現した。19章でハリーが、ドラコを見張るようにクリーチャーに命令したので、その報告にやってきたのだ。
ドビーは昼も夜もドラコを見張り、一週間寝ていないという。確かにハリーは「眠るな」とは言っていない。ただし「24時間尾行してほしい」とは言ったから、眠るなというのと同じだった。
それにしても、クリーチャーもドビーも今はホグワーツ校に雇われている身だ。ハリーがまったく個人的な用事でこんなふうに使うことが許されるのだろうか?

「いろいろな生徒といっしょに、しょっちゅう八階に行きます」というドビーの報告で、ハリーはドラコが必要の部屋を使っていることを知った。クラッブとゴイルがポリジュース薬で女生徒に変身して見張りをしていることも推測できた。

翌朝の新聞に、マンダンガスが強盗未遂でアズカバンに送られたことが載っていた。
「死の秘宝」の夏休みの場面でマンダンガスは登場しているし、それより前にもスネイプから「七人のポッター作戦」を提案するように魔法をかけられている。逮捕が三月だとしても、数ヶ月でアズカバンから出てきたことになる。
「九歳の男の子が祖父母を殺そうとしてつかまった」という記事もあった。服従の呪文にかけられてのことらしい。本筋には関係のないエピソードだが、ヴォルデモート一味がどんなひどいことでもするという例証なのだろう。

朝食後、自由時間があったのでハリーはさっそく八階に行って、必要の部屋の前でいろいろ試してみた。しかし部屋は開かなかった。ハーマイオニーが予想していたとおり、ドラコがその部屋をどう使っているかを知らないと、ドラコがそこにいる時間には開かないのだ。

ロンとハーマイオニーの仲は戻ったが、ラベンダーは相変わらずロンを追いかけつづけ、ロンはラベンダーから逃げ回っていた。この時もラベンダーを振り切るために、ロンとハリーは男子トイレに入った。そこには嘆きのマートルがいた。
マートルはある「男の子」の存在をほのめかす。それがドラコのことだというのは24章でわかる。

間もなくの週末、ロンとハーマイオニーは、他の生徒といっしょにホグズミードへ出かけた。姿あらわしの追加講習のためだった。
ハリーは透明マントをかぶり、忍びの地図を見ながら必要の部屋へ行った。部屋の前には女生徒がひとりいたが、地図によるとゴイルだ。ゴイルを追い払って部屋の前をあらゆることばを試しながら行ったり来たりしたが、部屋は開かない。ハリーはかんしゃくを起こして壁を力いっぱい蹴ったが、自分の指が痛んだだけだった。
そこへトンクスが現れた。トンクスはダンブルドアに会いにきたが、ダンブルドアは留守をしているという。このときのダンブルドアは、洞窟を調べに行っていたのかもしれない。トンクスは騎士団の用できたのだろうか。それともルーピンのことを個人的に相談したかったのだろうか。

昼食のために大広間へ行くと、ロンとハーマイオニーはすでに戻っていた。
ハーマイオニーの姿あらわしのできがよくて、指導者のトワイクロスがほめちぎったとロンが話す。「死の秘宝」でハーマイオニーは何度も姿あらわしによってハリーを救ったが、ここが伏線というわけだ。