ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団(第26章前半)

「リータは事細かに聞き出そうとハリーに迫ったし、ハリーも…」という記述は興味深い。
ハーマイオニーに脅迫され、ザ・クィブラーに報酬なしで記事を書くことは、リータにとって気の進まない仕事だったはずだ。しかしいったん筆を動かし始めれば、読者が満足する記事を書こうというリータの記者魂に火がついて、いろいろ細かい質問をしたというわけだろう。ただ、いつもの「相手の話をおもしろおかしく変えてしまう」という技は、ハーマイオニーの目が光っていて不可能だった。
ともかく、この記述でちょっとリータを見直した。

その記事が出る前に、夕食の席で、ディーンとネビルがリータのインタビューを話題にしたのはちょっと驚いた。「三本の箒」でのインタビューを誰かが聞いていたのだろうか。それともハリーが、寝室で彼らに話したのか。

「夕食のあと、ロンとジニーはシャワーを浴びにいった。ハリーとハーマイオニーは混み合ったグリフィンドールの談話室に戻り…」とある。この書き方だと、シャワー室は寮の外にあるという印象を受ける。着替えなどを考えると、寮内にある方がべんりだと思うのだが…
寮でハリーたちは、フレッド・ジョージと話をする。ジニーはそこそこプレイできるが、ロンはまるで駄目だという話になる。誰も見ていなければちゃんとブロックできるというから、技術ではなく精神面の問題だということは誰にでもわかる。

双子は最終学年だから、もうすぐNEWT試験がある。しかし試験などどうでもいい、スナックボックスが完成したからいつでも売り出せる、と言う。副作用の吹き出物を抑える成分を発見した、マートラップのエキスをリーが教えてくれたと。
ハリーの手の傷を治すために、ハーマイオニーはマートラップを材料に薬を作ってくれた。ハリーはそれをリーに教えた。それがまわりまわって、双子の商品完成につながった。

土曜日のクィディッチは対ハッフルパフ戦で、ロンはさんざんの出来だったが、ジニーが早めにスニッチを捕らえ、負けたものの点差は10点で済んだ。
この試合のあとフレッドが「俺、あいつをからかう気にもなれないよ」と言っているのにカチンときてしまった。つまり、今まではロンが失敗をするたびにからかっていたわけだ。ロンの不調が双子のせいだったことは、30章ではっきりする。
「ロンの気持ちを察して、ハリーは少し時間をずらして寝室に上がっていった。ロンがそうしたいと思えば、寝たふりができるように」と書かれている。ハリーもこんな気づかいをすることがあるのだ。
その夜、ハリーはまた、窓のない廊下の夢を見た。

月曜の朝、ふくろうがザ・クィブラーを運んできた。「三月号」とあるから、月刊なのだろう。昨日出たのだと、ルーナが言う。
表紙にハリーの写真があるというから、トップ記事として載ったわけだ。「ハリー・ポッターついに語る『名前を呼んではけないあの人』の真相ーー僕がその人の復活を見た夜」という見出しだった。
そして同時に、記事を読んだ読者からの感想が何通も運ばれてきた。ハリーを信じる人も信じない人もいた。

そこへアンブリッジがやってくる。ザ・クィブラーを見たアンブリッジは、減点と罰則を言い渡した。
ここでアンブリッジが「ザ・クィブラーを胸元におしつけ、肩を怒らせて立ち去った」とあるが、ハリーの胸元なのか自分の胸元なのかわからない。前者なら怒りながらも返したことになり、後者なら没収したことになる。もし没収したのなら、本人のハリーがまだよく読んでもいないうちから…と思う。
気になって原文を調べたら her chest  で、やはり没収だった。

そして午前中に、「ザ・クィブラーを所持しているのが発覚した生徒は、退学処分」という貼り紙が廊下にも教室にも貼り出された。
これを見たハーマイオニーは「学校中が、ひとり残らずあなたのインタビューを確実に読むようにするために、アンブリッジができることはただ一つ。禁止することよ!」と言う。わたしの好きなせりふだ。
ハーマイオニーは、生まれながらの心理学者と言っていいかもしれない。

ヴォルデモートが復活したことを、学校の生徒たちはやっと信じたようだ。教師たちも、いろいろなやり方でハリーへの好意を示してくれた。
ハリーにとっていちばんうれしかったのは、チョウと仲直りできたことだった。「あのインタビュー、とても勇敢だったわ」と言い、ハリーのほおに軽くキスをしてくれた。

図書室で、ドラコ・マルフォイ、クラッブ、ゴイルともうひとりの生徒がいっしょにいるのに出くわした。セオドール・ノットだった。セオドールはここが初出で、このあともストーリーにはかかわってこないけれど、「呪いの子」では重要アイテムの提供者になる。