ハリー・ポッターと死の秘宝(第29章後半)

ハリーたち三人はホグワーツの敷地内に入ることを目指してホグズミードにやってきた。そして、アリアナの肖像画とネビルとの案内で、やすやすとホグワーツに入ることができた。このことは期待以上だった。
しかしたどり着いた「必要の部屋」で、二十人もの生徒たちが待っていること、さらにそこへルーナとジーン、フレッド、ジョージ、チョウ、ジニーまでが現れたのは予定外だった。こんなごちゃごちゃした環境の中で考えをまとめることなど、ハリーには無理な話だ。

口火を切ったのはロンだった。分霊箱のことを説明せず、探し物をしているとだけ言って、みんなに手伝ってもらうことはできると。
ハーマイオニーが賛成する。

そこでハリーは、大きな声で言った。
「僕たちはあるものを探している。それは「例のあの人」を打倒する助けになるものだ。このホグワーツにある。それがどこにあるのかはわからない。レイブンクローに属する何かかもしれない」
ハリーはここで、レイブンクロー生の顔を見た。パドマ、マイケル、テリー、チョウ。この章の前半に書かれていた名前のほかに、パドマがいる。ということは、パーバティもいると考えていいだろう。

この説明だけでよくぞ通じたものだと思うが、ルーナが答えた。レイブンクローの失われた髪飾りがあると。何百年も前に失われたといわれているものではあるが。
その髪飾りがどんな形をしているか見たかったら、レイブンクロー寮で見せてあげる、とチョウが言う。寮にレイブンクローの像があり、髪飾りをつけているのだ。

その時、またハリーの心がヴォルデモートとつながった。ヴォルデモートは大蛇を肩に乗せて空を飛んでいた、ホグワーツに向かっているのかどうかはわからないが、時間は迫っている。

あまり良い手がかりにならないかもしれないが、ともかくその像を見てくる、とハリーはロンとハーマイオニーに言った。
チョウが案内しようと立ち上がったが、ジニーがさえぎった。「ダメ。ルーナがハリーを案内するわ」
原作者はなぜここでジニーにそんなことを言わせるのだろう。元カノに嫉妬する現カノの姿を描きかかったのか。しかし、提案したのはチョウなのに、こんな邪魔をするジニーには嫌悪感しか感じない。

ハリーとルーナは透明マントをかぶり、来た時とは別のドアから出た。行き先が毎日変わり、どこへ出るかは言ってみないとわからないのだという。
廊下を進み、らせん階段を登って、寮の扉の前に出た。

寮のドアには鍵穴も取っ手もなく、ワシの形のノッカーが付いている。
ルーナがノックすると、わしのくちばしが動き、「不死鳥と炎はどちらが先?」と尋ねた。
ハリー、どう思う?とルーナに聞かれ、ハリーは戸惑った。グリフィンドールやスリザリンと同じように、寮には合言葉で入ると思っていたのだ。レイブンクロー寮ではドアの質問に正しく答えないと開けてもらえないのだ。
ルーナは「円には始まりがない」と答えて、ドアを開けてもらう。なるほどと思う答えだ。

ふたりはレイブンクローの談話室に入った。そこに誰もいなかったのは、すでに深夜だったからだろう。
本棚があるということが、知性を尊ぶレイブンクローらしいと思う。グリフィンドールの談話室には本棚がなく、ハーマイオニーはいつも図書室からたくさんの本を借りていた。
扉の反対側のくぼみに、大理石のレイブンクロー像があった。頭には大理石の髪飾りが載っていた。

ハリーは透明マントから出て、髪飾りの文字を読んだ。
その時、後ろでアレクト・カローの声がした。
「ケタケタという甲高い魔女の声がした」と書かれている。この原作者は、ヴォルデモートといいベラトリックスといい、悪人は甲高い声に設定するのが好きらしい。

次の章でわかるが、ヴォルデモートはカロー兄妹に「ポッターがレイブンクロー寮に来るかもしれない。来たらすぐ知らせよ」と言いつけていたのだ。そのためアレクトはレイブンクロー寮で待ち構えていたのだ。
アレクトはハリーを見つけてすぐ、腕にある闇の印を指で押した。