ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団(第24章後半)

クリスマス休暇明けが1月の何日になるのか、わたしは知らない。
ただ、スネイプの最初の個人授業が月曜日の6時に行われることが、ブラック邸の場面のスネイプのせりふからわかっている。ホグワーツに戻った次の日がスネイプの個人授業だったというから、戻ったのが日曜日ということになる。

月曜日、チョウ・チャンがハリーに近づいてきて話しかけた。ハーマイオニーは気をきかせて、「わたしたち、図書室に行ってるわ」と、ロンをひきずっていった。こういう細かい描写がおもしろい。
チョウがもじもじしながら、遠回しにデートの誘いを口にし、それを理解できないハリーがちぐはぐな返事をしてしまったが、不器用ながらなんとか、バレンタインデーのデートの約束ができた。
ここを「初々しい、微笑ましい」と感じるか、「やっぱりハリーとチョウは性格が合わない」と感じるかは読者によるだろう。わたしは後者だ。ハリーには、ハーマイオニーのように何でもズバリと言ってくれる女性の方がうまくいく。歯に衣を着せないという点ではジニーも同じだから、最終的にジニーと結ばれるのは正解かもしれない。

6時、ハリーは重い気持ちでスネイプの部屋に行った。
スネイプはまず、閉心術について説明する。その中で、次の部分はストーリー上重要だ。
「たとえば闇の帝王は、誰かが嘘をつくと、ほとんど必ず見破る。『閉心術』に長けた者だけが、嘘とはうらはらな感情も記憶も閉じ込めることができ、帝王の前で虚偽を口にしても見破られることがない」
「君を殺し損ねた呪いが、なんらかの絆を、おまえと闇の帝王の間に創り出したようだ」
ハリーの意識が蛇の中にいてアーサーを襲ったとき、闇の帝王は蛇にとりついていたのだという。だからハリーは蛇の目で事件を見た。そして闇の帝王は、ハリーとの絆に気づいた。

ハリーは知らないが、ヴォルデモートについてダンブルドアがここまで正確な情報をつかんでいるのはスネイプのおかげだろう。スネイプはすでに二重スパイとしての活動を始めている。ハリーの閉心術の授業は、スネイプとしてもやりたいしごとではなかったと思うが、今のハリーに閉心術が必要なことを誰よりもよく知っているのはスネイプだった。

スネイプがレジリメンスの呪文でハリーの心に入ろうとし、ハリーはそれを防ごうとする。ハリーの心に、こども時代も含めて、いろいろな思い出が断片的に浮かぶ。
その時、尋問のため魔法省に行って、アーサーといっしょに通った廊下が思い浮かんだ。その瞬間、ハリーの記憶の中のふたつの思い出が結びついた。ハリーが何度も夢に見た窓のない廊下は、魔法省の神秘部に続く廊下だった。
ダンブルドアはとっくに知っていることだったはずだが、ハリーは今気づいたのだ。蛇は、つまりヴォルデモートは、神秘部にある何かを狙っていた。

スネイプの部屋を出て図書室へ行ったハリーは、ロンとハーマイオニーに神秘部のことを話し、いっしょに寮に戻った。
寝室に入って疲れた体と頭を休めようとしたハリーは、突然ひたいに激痛を感じた。そして、歓喜の感情がわきあがってきた。ロンに呼ばれ、自分が笑い声をあげていることにハリーは気づいた。
ハーマイオニーが、君の様子を見てくるようにって言ったんだ」とロンは言う。ほんとにハーマイオニーは、いろいろな気遣いができる子だ。スネイプとの授業で心を乱され、ヴォルデモートの侵入を許していることが予測できたのだ。

ハリーが感じた歓喜は、ヴォルデモートの歓喜だった。
その理由は、次の章ですぐわかる。