ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団(第25章前半)

ハーマイオニーは日刊予言者新聞を購読している。
ハリーがヴォルデモートの歓喜を感じた翌朝の新聞に、アズカバンから10人の囚人が脱獄したというニュースが載っていた。
「10人」と書かれているが、名前まで記述されているのは3人だけだ。アントニン・ドロホフ、オーガスタス・ルックウッド、ベラトリックス・レストレンジ。
ドロホフについては「ギデオンならびにファビアン・プルエットを殺害した罪」と書かれている。(ファビアンは「死の秘宝」ではフェービアンとなっていて、訳が一貫しない。この出版社の校正システムはどうなっているのか。いや、そもそも校正システムが存在しないのか)
プルエット兄弟の名は既出だが、この名がモリー・ウィーズリーの旧姓であることは「死の秘宝」ラストでやっとわかる。モリーはこの記事をどんな気持ちで読んだだろう。

新聞記事では、シリウス・ブラックが手引きをし、シリウスを旗頭に死喰い人たちが集結するのではと書かれている。
実際には、シリウスの脱獄と今度の10人の脱獄とは何の関係もないのだが、シリウスがヴォルデモート側だと思い込んでいる魔法省がこういう解釈をするのは無理もない。
10人の脱獄は、ディメンターがヴォルデモート側についたことを意味するわけだが、それに気づいている魔法使いが何人いるだろう?
ダンブルドア、マクゴナガル、スプラウトといった教師陣は、さすがに深刻な表情で新聞を読んでいたが…

新聞は、ブロデリック・ボードの死も報じていた。ハリーたちが病院に行ったとき、ロックハートと同じ病棟にいた患者だ。ロンが、ボードは魔法省の神秘部に勤めていたと言い出した。父親から聞いたのだという。
病院で彼を見たとき、癒師は「ボードさんは話す能力を取り戻してきた」と言っていた。ボードの口をふさぎたい誰かが、悪魔の罠を何でもない鉢植えに仕立ててボードに贈ったのだ。
しかし、誰がどんな方法で鉢植えを用意したのか、結局説明されずじまいだった。ヴォルデモート側の誰かがヴォルデモートの命令でやったことだと、読者が想像するだけだ。

ハーマイオニーが立ち上がった。「手紙を出しに」「どうかわからないけど… でも、やってみる価値はあるわね。それに、私にしかできないことだわ」と、謎めいたことを言いながら。
リータ・スキーターを呼び出していたのだと、あとでわかる。

ハーマイオニーが立ち去ったあと、ハグリッドがやってくる。
ハグリッドのせりふは「停職になった」と訳されているが、これは「停職処分、ただし執行猶予」の意味だろう。そのあとも授業を続けているのだから。わたしなら「停職になった。しばらくは猶予だが」とでも意訳しておくだろう。

アンブリッジはまたしても「ホグワーツ高等尋問官令」を出した。
「教師は、自分が教えている科目に厳密に関係すること以外は、生徒に情報を与えてはならない」という趣旨だ。
これを逆手にとってアンブリッジに反抗したリー・ジョーダンは、アンブリッジにハリーと同じ罰則を与えられ、ハリーはハーマイオニーに教えられた治療法をリーに伝授した。これがあとで、双子の商品完成に役立つことになる。

10人の死喰い人が脱獄したことで、DAメンバーは練習に熱心になった。
なかでもネビルは急速に上達した。
「ハリーが『盾の呪文』を教えたとき(中略)ネビルより早く呪文を習得したのは、ハーマイオニーだけだった」と書かれている。しかしハリーはいつどこで「盾の呪文」を覚えたのだろう? ハーマイオニーも知らない呪文をハリーが知っているなんて変だ。

一方、閉心術の方はいっこうに進歩しなかった。
ロンは、スネイプが本気でハリーを助ける気がないのでは、と疑う。ハーマイオニーは「(スネイプを)ダンブルドアが信用しています」「それに、ダンブルドアを信じられないなら、私たち、誰も信じられないわ」と主張する。
気の進まない役目であっても、スネイプはまじめにハリーに教えようとしていたと、わたしは思う。しかし、名選手必ずしも名コーチならず。閉心術にたけているからといって、それを教えるのが上手だとは限らない。それに、ハリーがスネイプを快く思っていないのだから、たとえ教え方がうまくても効果は薄くて当然だろう。

[追記]
「ハリーはいつどこで『盾の呪文』を覚えたのだろう?」と書いたが、あとで思い出した。「炎のゴブレット」で、第三の課題に向けて準備をしているとき、ハリーは「盾の呪文」も練習していた。
でもあの時はロンもハーマイオニーもいっしょだった。いまさらハリーがハーマイオニーに「盾の呪文」を教えるというのは、やっぱり不自然だと思う。