ハリー・ポッターと謎のプリンス(第30章)

校長の横死という事件をうけて、「授業はすべて中止され、試験は延期された」と書かれている。
授業の中止はわかるが、延期された試験はいつやるのだろう? 夏休みが済んでから実施されるのだろうか。これについては何の記述もないので、わからないままだ。

何人かの生徒は、迎えに来た親に連れられて家に戻った。
シェーマス・フィネガンが、迎えにきた母親の言うことを聞かずにダンブルドアの葬儀まで残ったエピソードは、本筋には関係ないけれども、わたしにはおもしろい。シェーマスは「死の秘宝」で、ネビルといっしょにレジスタンス行動をし、カロー兄妹に暴行をうけて傷だらけになる。

もう授業も試験もないのに、ハーマイオニーは図書室に足しげく通っていた。R.A.Bが誰かを調べるためだった。そこでハーマイオニーは偶然、古い小さな新聞記事で、アイリーン・プリンスがスネイプの母親だったことを知る。アイリーンは魔法使いで、夫はマグルだった。

葬儀の日、ドラコ・マルフォイは大広間での朝食に姿を見せなかった。もう家に戻っていたのかもしれない。
朝食のあと、マクゴナガルの指示で、生徒たちはそれぞれ寮監に引率されて校庭へ出た。ダンブルドアの葬儀は、校庭で行われるのだ。
「マダム・ピンスが(中略)フィルチの脇に立っていた」と書かれている。ピンスとフィルチが同じ場面に出てくるのはここだけだと思う。このふたりが恋仲だというファンの深読みの根拠はこの一文しかない。

この葬儀の場面は壮観だ。魔法界の主な登場人物が勢揃いする。
キングズリー、ムーディ、トンクス、ルーピン、ウィーズリー夫妻、ビルとフラー、フレッド、ジョージ、ボーバトンのマダム・マクシーム、漏れ鍋の店主トム、マダム・マルキンホグワーツ特急の車内販売魔女、フィッグばあさん、ナイトバスの運転手と車掌、スクリムジョール、アンブリッジ、ファッジ、リータ・スキーター。ホッグズ・ヘッドのバーテンもいたが、列席者の誰も彼とダンブルドアの本当の関係を知らないように思える。
ケンタウルスや水中人たちも近くに並んでいた。葬儀が湖のほとりで行われたのは、水中人も葬儀に参加できるようにという配慮だったのかもしれない。

この場面はぜひ映画化してほしかったと思う。出演者のスケジュール調整が難しいが、別々に撮ってあとで合成することだってできるだろう。

正面に大理石の台が置かれ、ハグリッドがダンブルドアの遺体を抱いてその台に乗せた。
弔いのことばを唱えたのは、「髪の毛がふさふさした小さな魔法使い」と書かれている。
この魔法使いはビルとフラーの結婚式にも祭司の役をしているから、冠婚葬祭のときの儀式を司るのが職業なのかもしれない。宗教が存在しない魔法界にも、こういう役目の人がいるのだ。

台の周りに白い炎が燃え上がった。誰が魔法をかけたのか書かれていないが、おそらくふさふさ髪の魔法使いだったのだろう。その炎が消えると、白い墓ができあがっていた。

葬儀のあと、ハリーはジニーに「もうつき合えない」と告げた。
ジニーは、ハリーがヴォルデモートとの戦いに身を投じることを推測していた。
ここで、ジニーがほかの男性とつき合っていたのは、ハーマイオニーの助言によるものだったとわかる。わたしはこんな助言をしたハーマイオニーにも、それを聞いたジニーにも腹が立った。当て馬にされた少年たちがかわいそうだ。

スクリムジョールがハリーに話しかけてきて、ダンブルドアとどこに出かけていたのかを問いつめたが、ハリーは答えることを拒否した。

校庭を歩きながら、ハリーはハーマイオニーとロンに「もう学校に戻らない」と宣言する。
あと四つの分霊箱を探さなければいけない。それがどこにあるのか、皆目わからないけれど。
ふたりは、自分たちもいっしょに行くと言う。
しかしその前に、フラーとビルの結婚式があるからそれに出席するべきだ、とロン。
「やがてはヴォルデモートと最後の対決の日が来ると、わかってはいるけれど、ロンやハーマイオニーといっしょに過ごせる、最後の平和な輝かしい一日がまだ残されていると思うと、ハリーは心が浮き立つのを感じた」
この文章、印象的だ。
実際にはその「一日」が中断されてしまうのだが…