ハリー・ポッターと賢者の石 第3章

今まで、それと知らずに時たま魔法使いに会ったり、意識せずに魔法を使っていたハリーだが、この章でいよいよ魔法界からの働きかけを体験する。11歳になったので、ホグワーツから手紙が来たのだ。バーノンがじゃまをするので、不思議な手紙をなかなか読むことができないハリー。読者にとっては、かなりドキドキわくわくする部分だ。ハリーの居場所が変わるたびに手紙の住所が変わるのがおもしろい。魔法界にはGPSより高性能なシステムがあるようだ。ハリーが1階の物置から2階の寝室へ移動したこともちゃんと把握できるのだから。

この章では、バーノンがなぜ常軌を逸した態度に出るのか、ずっと不思議だった。
魔法のようなまともでないものをハリーからたたき出してやると決めた、とバーノンは言う。しかしそれだけでは説明がつかない。手紙を拒否し、手紙から逃れようとするバーノンの行動は、まるで「手紙を受け取ったら妻や息子の命が危ない」とでも考えているように見える。
もしハリーをホグワーツへ送ってそのまま縁が切れるのなら、バーノンはそうしたかったかのではないだろうか。しかし、ハリーは夏休みにまた戻ってくる。いまわしい魔法とやらを身につけて・・・
ハリーが毎年夏休みにダーズリー家へ戻らなければならないということを、ハリーもそして読者も、「不死鳥の騎士団」37章でやっと知る。しかし、バーノンとペチュニアは、1歳のハリーを玄関に見つけた日からそれを知っていた。ホグワーツへハリーを送れば、魔法を自由自在に制御できるようになったハリーが毎年戻ってくる。第2章のところで書いたように、それまでもハリーはダーズリー家に損害を与えていたはずだ。それがエスカレートしたらどうなるのか。
バーノンは逃げ回る。ただ逃げるだけではない。魔法使いが現れたら反撃できるよう、銃も用意している。彼の決意は本物だった。
しかし、しょせんマグルの悲しさ。ハグリッドに追いつかれ、銃も役に立たない。

ところでこの章に出てくる手紙から、プリベット通りがあるのはサリー州だとわかる。イギリス南部の州だ。一同が泊まったホテルはコークワース州。地図を調べても見つからないので、架空の州かもしれない。
ハリーはみじめな思いで誕生日を迎えるが、まさにその誕生日に、ハグリッドがやってくる。ここではまだ、日付がわからない。ハリーの誕生日が夏休みの時期だということと、11歳の誕生日が火曜日であることという情報しかない。
(ハリーの誕生日がわかるのは第8章の終わり。ただし、まだ生年はわからない)

話は戻るが、ハリーが最初の手紙をいったん手にしているのに、バーノンにとりあげられ、封筒しか見られなかった場面で、「羊皮紙の封筒」と書かれている。この部分はハリー視点の描写だと思うが、現代の11歳に普通の紙と羊皮紙の見分けがついたのか? 羊皮紙など見たことはないはずだが。