ハリー・ポッターと賢者の石 第11章

章の初めの文は「11月に入ると、とても寒くなった」である。その少しあとに、「クィディッチ・シーズンの到来だ」と書かれている。寒い地域で屋外でやるスポーツなのに、なぜ晩秋が「シーズン到来」になるのか、どうも不思議だ。スキーじゃあるまいし。
ハーマイオニーが「クィディッチ今昔」という本を貸してくれた、という記述もある。貸してくれたということは、彼女は自分でこの本を買って所有しているが、ハリーは持っていないという状況のはずだ。しかしこの本は実際にチャリティー用に発売され、「ホグワーツ指定教科書」との肩書きをつけて売られた。彼らが一年生の時には単なる参考書だったが、その後指定教科書になったと解釈しておこう。

この章では、初めてクィディッチ試合の描写がある。スリザリン対グリフィンドールだが、ここで出てくる選手を列挙してみよう。

グリフィンドールの選手:
オリバー・ウッド、フレッド、ジョージ、アンジェリーナ・ジョンソン、アリシア・スピネット、ケイティ・ベル、ハリー
(7人いるから、これで選手全員だ)

スリザリンの選手:
マーカス・フリント、エイドリアン・ピシュー、テレンス・ヒッグズ

試合中に、ハリーのほうきが急に言うことをきかなくなる。
この時のハグリッドのせりふ、「強力な闇の魔術以外、ほうきに悪さはできん」がおもしろい。魔法使いのほうきというのは、ただ飛ぶだけではなく、魔法で機能を狂わせられないように作ってあるのだろう。ハグリッドのいうとおり、ここで使われたのは闇の魔術だった。
ここでのハーマイオニーは素晴らしい。ハグリッドはもちろん教師たちも気づかないのに、誰かが闇の魔術でほうきの機能を狂わせていると瞬時に悟り、双眼鏡で犯人を捜した。目に入ったのは、呪文を唱えているスネイプだった。ハーマイオニーは迷うことなく全速力で走る。クィレルとぶつかっても、立ち止まりも謝りもしなかった、と書かれている。みごとなミスリードだ。ハーマイオニーが必死になっていることを表現する記述だと思い込んで読んでいたのだが、実はクィレルにぶつかったからこそハリーは助かった。

体勢を立て直したハリーは、口でスニッチを捕らえる。この時手を使わなかったことが、「死の秘宝」で意味を持つ。なんとも息の長い伏線だ。

試合のあと、ハグリッドの小屋で3人はあの三頭犬の名を知る。あの犬はハグリッドの物で、何かを守るためにダンブルドアに貸したという。ハグリッドはニコラス・フラメルの名前も口にしてしまう。
この名前が第6章にでてきたことに気づいた読者もいただろう。わたしはまったく思い出せなかったが、イギリスでは名を知られている人物なのだろうか。