ハリー・ポッターと賢者の石 第12章(前半)

この章には重要アイテムがふたつ登場する。「透明マント」と「みぞの鏡」だ。
みぞの鏡はこの巻だけで、2巻以降は出てこないが、透明マントは今後何度も使われ、最終章では最重要アイテムのひとつになる。

ここで書かれているのはクリスマスの時期のあれこれなのだが、読んでいてちょっと不思議に思った。自分の乏しい知識では、イギリスの主要な宗教はキリスト教だ。だからイギリス人の多くはクリスマスに教会でミサに参加したり、キリストに思いをはせたりするのだと思っていた。
しかしこの小説では、クリスマスは単なるお祭りだ。キリストのキの字も出てこない。日本と同じじゃないか。

クリスマス休暇にハリーとロンはホグワーツに残り、ハーマイオニーは帰郷する。この場面で、ハーマイオニーの両親の職業がわかる。
ハリーとロンがチェスをする場面は、第16章へのうまい伏線になっている。

クリスマスプレゼントを受け取るハリーたち。
作品全体を通じて、モリーはハリーのことを気にかけ、何かと世話を焼くのだが、この時のプレゼントがその最初の行為だろう。自分の息子たちに贈るのと同じセーターをハリーにもプレゼントした。
ここで、ダーズリー夫妻から形ばかりのプレゼントが来るのを、読んでいて不思議に思った。嫌っている甥になぜわざわざ? もしかしたら、「ダーズリー家を自分の家と呼べる間は安全」という条件を満たすために、ダンブルドアが頼んだのかもしれない。

プレゼントの中に、透明マントがあった。
「風変わりな細長い文字で」書かれた手紙がついていた。
原作での手紙文は単にイタリックになっているだけだが、日本語訳ではわざわざフォントを変えている。こういうよけいなことをしないでほしい。おかげで「不死鳥の騎士団」第2章の吼えメールの正体が、フォントだけで見当がつくという、原作にないヒントを作り出してしまった。
ところで透明マントに添えた手紙に、ダンブルドアはなぜ名前を書かなかったのだろうか。ダンブルドアが父親と親しいと知ったら、ハリーがあれこれ聞きたがるだろうから、それを避けるためだったのか?