ハリー・ポッターと賢者の石 第16章(後半)

ハリーたちは「賢者の石」が隠されている部屋へと向かう。
フラッフィーが守っている4階の廊下でハリーは「君たち、戻りたかったら戻ってくれ」と言い、ロンとハーマイオニーはいっしょに行くと答える。
ロンとハーマイオニーには、ハリーにつきあって危険をおかす義務はない。ヴォルデモートが戻ってくるのを何とか阻止したいと考えているのはハリーだし、これはもともとハリーだけの問題だ。特にマグル生まれのハーマイオニーは、ヴォルデモートの問題をそれほど深刻に受け止めていなかったかもしれない。でもロンとハーマイオニーは、自分たちの意志でハリーに同行することを決めた。
ここのやりとりは、何度読んでも感動する。

石を守るために備えられたいくつもの関門を3人は突破していく。
まずフラッフィー。対処法はわかっていたから、笛を吹いて眠らせた。
次に「悪魔の罠」という名の植物。暗闇と湿気を好む植物なので、杖から火を出しておとなしくさせた。この植物の特性を覚えていたハーマイオニー、それを聞いて「火をつけて」と叫んだハリー、「薪がないわ!」とうろたえるハーマイオニーに火を出す魔法を思い出させたロン。3人の誰が欠けていても危なかった。
続いて羽根の生えた鍵の群れ。ここも3人で挟みうちして、目的の鍵をつかまえた。
今度は巨大チェス。チェスの得意なロンが、自分を犠牲にして勝った。
次の部屋はびんのパズル。優れた頭脳を持つハーマイオニーが正解をあてた。
そして、ハリーひとりが最後の部屋へ・・・

ひとつ、腑に落ちないことがある。
チェスの部屋を突破したあと、ハーマイオニーが言うせりふだ。「スプラウトは済んだわ。悪魔の罠だった・・・鍵に魔法をかけたのはフリットウィックに違いないし、チェスの駒を変身させて命を吹き込んだのはマクゴナガルだし・・・」
スプラウト先生が悪魔の罠をセットしたのはわかる。しかし、フリットウィックとマクゴナガルについては根拠がわからない。教師のうち誰々が協力したかは、第14章に出てくるが、でもたとえば、チェスはダンブルドアという可能性だってあるだろうに。わたしは飛ぶ鍵の群れをマクゴナガルだと思った。鍵を鳥に変身させるのは、変身術教授なら簡単だと推理したのだ。
ここでハーマイオニーにこんなせりふを言わせるのなら、クリスマス休暇の場面でチェスをしていた時にでも、ロンの兄の誰かが「マクゴナガルはチェスの名人なんだって」とでも言えばよかったのに。

それから、びんのパズルの部分に、大きな矛盾がある。
イラクサ酒は2本、毒薬は3本なのに「毒入りびんのある場所はいつもイラクサ酒の左」となっていて、数が合わないのだ。
不思議に思ってネットで検索したら、原文には矛盾がなく、日本語の誤訳だとわかった。どうして出版前に気づかなかったのか。また、版を重ねているのに、どうして訂正しないのか?