ハリー・ポッターと賢者の石 第16章(前半)

章タイトルの原文は Through the Trapdoor だが、なぜ「仕掛けられた罠」と訳したのだろう。
素直に「仕掛け扉を通って」「仕掛け扉を突破して」じゃいけないのか?

それはともかく、ヴォルデモートが森に居ると知ったハリーたちは、試験の時期を迎える。
本の学校では定期試験が学期ごとにあるが、イギリスでは年度末に一度だけなのだろう。マクゴナガルの試験で「美しい箱は点数が高く、ひげのはえた箱は減点された」と書かれているのが楽しい。

試験が全部済んだあと、ハリーは大事なことに気づく。ハグリッドはなぜドラゴンを手に入れることができたのか、という疑問だ。ドラゴンを飼いたいと願っているハグリッドの前に、偶然禁制の卵を持った人物が現れるのは不自然すぎると。これを思いつくのはロンでもハーマイオニーでもよかったと思うのだが、やはり賢者の石やヴォルデモートについていちばん真剣に考えているのはハリーだから、ハリーという設定でいいのだろう。

案の定、ハグリッドは相手の顔も見ていなかった。酒をおごられ、「ドラゴンの卵は誰にでもくれてやるわけにはいかない」とおだてられ、フラッフィーの秘密をしゃべってしまう。この時のハグリッドの頭の中は、欲しくてたまらなかったドラゴンが手に入るという期待でいっぱいだったのだろう。
ハグリッドが卵を手に入れたのは「ホッグズ・ヘッド」だった。この段階では、単に「村のパブ」だが、「死の秘宝」まで読み終えた読者は、そこにアバーフォースがいたことを知っている。また、「謎のプリンス」でハリーが見るダンブルドアの記憶から、アバーフォースが兄に迅速な情報提供をしていたことも知っている。つまり、この時ハグリッドがドラゴンの卵を手に入れたことも、フラッフィーの秘密をしゃべってしまったことも、ダンブルドアには筒抜けだった可能性が高い。
ところで、この時のフードをかぶった人物は誰だったのだろう。この時点でヴォルデモートに協力しているのは、読者の知る限りクィレルだけだ。ふだんおびえてどもっているクィレルが、この時は堂々とした話し方だったので、ハグリッドが見抜けなかったと解釈しておこう。

ダンブルドアにこのことを報告しようとしたハリーたちは、魔法省から緊急の手紙が来てダンブルドアが出かけたことを知る。スネイプは今夜決行するだろうと考えた3人は、透明マントを使って、スネイプより先に石を手に入れようと相談する。
この時の会話でハーマイオニーが、フリットウィックの試験で100点満点中120点を取ったと言っている。どうやってそんな点数が可能なのか不思議だが、必要な答えのほかに詳しい知識を書き連ねて追加の点をもらったのだろうか。

外へ出ようとした3人の前にネビルが立ちふさがる。ハリーがハーマイオニーに「何とかしてくれ」と頼むのが情けない。ネビルは全身金縛り呪文をかけられてしまう。ハリーやロンが知らない呪文を、ハーマイオニーはたくさん知っているようだ。