ハリー・ポッターと賢者の石 第17章(前半)

ロンの活躍で巨大チェスの部屋を突破し、ハーマイオニーのおかげでびんのパズルの部屋を無事通り抜けたハリーは、さらに奥の部屋へ入る。そこにはクィレルがいた。
クィディッチの試合でハリーを落とそうとしたのがクィレルだったこと、スネイプは逆にハリーを救おうとしていたことをハリーは知る。スネイプがハリーの父親と同窓で、ふたりが互いに毛嫌いしていたこともクィレルの口から語られる。
わたしは日本語訳からこの作品に接したので、「我輩」という一人称から、スネイプを老人と思い込んでいた。黒髪の老人というのは変だが、魔法使いならそういうこともあるのかと思った。11歳のハリーの父親と同級生だったとは!

クィレルの後ろには「みぞの鏡」があった。クィレルは鏡の中に、石を手に入れてヴォルデモートに差し出している自分を見ている。しかし、どうやって鏡から石を取り出すかがわからないのだ。
ハリーは必死にクィレルのじゃまをしようとする。鏡に集中するのを妨げるため、絶えず話しかけたり、鏡に石が見えてもうそをついたり。
石を狙っていたのが実はクィレルだったというショックの中で、これだけあれこれ知恵を巡らすハリーに感心した。その努力は結局は無駄だったけれど、ここのハリーは偉いと思う。

クィレルがターバンをほどくと、彼の顔の反対側には別の顔があった。「蝋のように白い顔、ギラギラと血走った目、鼻孔は蛇のような裂け目になっていた」と描写されている。ヴォルデモートだ。「誰かの体を借りて初めて形になることができる」とその顔は言う。「常に誰かが、喜んでわしをその心に入り込ませてくれる」とも言っているが、もしこのせりふがハッタリでないなら、クィレル以外にも、ヴォルデモートを取り付かせた人間がいたことになる。でもそういう人物は結局登場しない。「炎のゴブレット」でのヴォルデモートの述懐を読むと、彼が初めて取り付いた相手はクィレルだったとしか思えない。作者は途中で設定を変えたのかもしれない。

ヴォルデモートはハリーがポケットに石を持っていることを見破った。この時点では、理由は説明されていない。しかし巻が進めば、彼が開心術の名人だとわかる。

ヴォルデモートの命令でクィレルはハリーを殺そうとするが、クィレルの皮膚でハリーが触れたところはすぐにやけどの火ぶくれになり、うまくいかない。それを悟ったハリーは、クィレルに思い切りしがみつく。ハリーを呼ぶ別の声が聞こえる中、ハリーは意識を失う。あとでわかるが、この時ハリーを呼んだのはダンブルドアだった。