ハリー・ポッターと賢者の石 第17章(後半)

ハリーが目を覚ますと、ホグワーツの医務室のベッドの上だった。ダンブルドアが上からのぞきこんでいた。かたわらには見舞いのお菓子が積み上げてあった。
意識を失っている間に3日たっていたのだ。

読んでいておどろいたのは、ダンブルドアが「石はもう壊してしまった」と言ったことだった。
石の持ち主のニコラス・フラメルと相談して、壊すことにしたのだという。
今になって壊すぐらいなら、なぜホグワーツの教師たちも巻き込んで厳重に隠したのだろう? 肩すかしをくらった気がした。
「死の秘宝」まで読み終えた今ならわかる。ダンブルドアは、賢者の石を使ってハリーをきたえようとしたのだ。わざとヴォルデモートと対決させ、ハリーに敵の存在を教えた。そして、ハリーがホグワーツで得たふたりの親友が信頼に足るかどうかもテストした。

想像をたくましくすれば・・・
フラメルが賢者の石を壊そうと決めたのは、ダンブルドアが石を預かる前じゃないだろうか。
もう十分に生きたと感じたフラメルは、妻と相談して石を壊すことを決め、それを友人のダンブルドアにうちあけた。ダンブルドアは、壊す前にその石を貸してほしいと頼んだ。石をグリンゴッツに預け、何らかの方法でそれがヴォルデモートの耳に入るようにした。次にハグリッドを使い、グリンゴッツから石を引き取るところをハリーに見せた。そして、どういう口実を使ったかわからないが、ホグワーツの教師たちの手で何重もの守りをしかけて石を隠した。
石を守ることが目的じゃなかった。ハリーにヴォルデモートと対決する機会を与えることこそ、真の目的だった。
のちに、自分自身の命さえ廃物利用したダンブルドアのことだ。壊すと決めた石を廃物利用するぐらいのことはすぐ考えつくだろう。

「そもそも(ヴォルデモートは)なんで僕を殺したかったんでしょう」
ハリーのこの問いに、ダンブルドアは答えない。時がくればわかるだろうと言う。ダンブルドアが答えるのは4年後、「不死鳥の騎士団」37章になってからだ。
それ以外の質問には答えてもらえた。クィレルがハリーにさわれなかったのは、母親の愛情による魔法の力がハリーの肌に残っているからだということ。透明マントを贈ったのがダンブルドアだということ。スネイプがハリーの父を憎んでいたということ。みぞの鏡から石を取り出すことができたわけ。
スネイプとハリーの父の関係について、ダンブルドアは事実のごく一部しか話さなかった。スネイプとの約束で肝心のところは伏せていたが、これはしかたがないだろう。
みぞの鏡については、なるほど!と思った。「石を使いたい者」ではなく、「自分は使わないが、石を手に入れたい者」が鏡の前に立った時、石はその人物のもとにテレポートする。ダンブルドアはそういう魔法をかけて、石を鏡の中に隠したのだ。実に巧みなやり方だ。

翌日、病室にハグリッドが見舞いにきて、アルバムを渡す(映画では、駅で渡すようだ)。
両親の写真を持っていないハリーのために、写真を集めてくれたのだ。
今のハリーにとって、どんな宝よりも貴重なプレゼントだったと思う。こんなプレゼントを思いついたハグリッドに、そして原作者に感謝したい。

ここまで気分よく読み進めたのだが、学年末のパーティーの場面で、わたしは不快な思いをすることになった。
スリザリンが寮杯をとることが決まっていたのに、ダンブルドアがグリフィンドールに追加点を与え、ひっくりかえしてしまったのだ。
追加点を与えること自体はかまわないと思う。特に、みそっかすのネビルにスポットライトが当たったことはすばらしい。しかし、パーティーが始まる前にしておくべきことだろう。いったん大広間をスリザリン優勝の飾り付けにしておいて、ハーティーが始まってからひっくり返すなんて、あまりにもスリザリンに対していじわるじゃないか。
もしわたしがその場にいたら、自分がスリザリンに所属していようといまいと、ダンブルドアのやり方に抗議しただろう。
原作者はどんでん返しで盛り上げたかったのかもしれないが、わたしには腹立ちだけが残った。
この巻を読んでいて何度もスネイプのえこひいきに腹を立てたが、校長の権力を利用したダンブルドアのえこひいきがいちばん悪質だ!!!

一年が終わり、ハリーたちはホグワーツ特急に乗ってロンドンへ戻る。
生徒は全員ホグワーツ特急で帰宅するのだろうか? 違う方角に帰る生徒はどうするんだろう? 列車はキングズ・クロスからさらに他の地域へも向かうのだろうか?
ダーズリー家全員が駅へ迎えに来ていることにおどろいた。もうすぐ12歳のハリーが、なぜひとりで家まで戻れないのだろう? 迎えが要るとしても、なぜ一家全員で来る必要があるんだ? この疑問は、結局最後まで解けなかった。