ハリー・ポッターと秘密の部屋 第1章

ハリー・ポッターシリーズは全部でひとつの小説で、巻ごとの読み切りではない。
しかしどの巻も、第1章には初めて読む人のための簡単な解説が本文中でなされている。こういう配慮は評価できる。
ただ、巻に番号がついていないのは残念だ。リアルタイムで順番に買った人はともかく、何巻か出たあと以降は、どの順番に読んでいいのかわからずにとまどう人が多いに違いない。なぜ巻に番号をつけなかったのだろう。不親切すぎると思う。「ドリトル先生シリーズ」のような、どこから読んでもかまわないというお話じゃないんだから。

第1章は他の巻と同じく、ダーズリー家での夏休みから始まる。
ハリーにいじわるな叔母一家、わがままないとこダドリー、ホグワーツが恋しくてたまらないハリー。
この中で、叔父バーノンが取引先の夫婦を招待する準備に没頭する描写がある。ハリー視点の物語だからこっけいに描かれているが、わたしは、バーノンがこのパーティーの準備に夢中になるのはビジネスの世界に生きる者として当然だと思う。ハリーに「いないふりをせよ」と命じるのも、けっしていじわるだけが動機じゃないだろう。ホグワーツ入学前のハリーは、無意識とはいえ魔法を使ってとんでもないことを何度もやった前科があるのだから、バーノンがピリピリするのは当然だ。

英語圏で please が「魔法のことば」と呼ばれていることがこの章でうまく使われている。
でも、そのことを知らない人にはわかりにくいだろう。ハリーは決して、魔法使いの術という意味で「魔法」ということばをつかったんじゃない。こういうことは、訳者があとがきでちゃんと説明するべきじゃないのか?

この章には日付が書かれていないが、ハリーの誕生日となっているから、7月31日ということになる。
イギリスの夏休みっていつから始まるんだろう? 
7月1日からだとすれば、1ヶ月間ハリーには魔法界の友人から手紙が届かなかったことになる。そしてバースデーカードも来ない。しかもそれをダドリーにからかわれる。
実は、ロンもハーマイオニーも手紙を出していた。それを途中でうばっていた者があったことが次章でわかる。