ハリー・ポッターと秘密の部屋 第3章(前半)

バーノンに閉じ込められているハリーを、フレッド・ジョージ・ロンの兄弟が助けにくる。窓の外に青い自動車が止まっていて、後部の窓からロンの顔がのぞいていた。ハリーが寝ていたのは2階だから、車は窓の外に浮かんでいるわけだ。運転席にはフレッドが、助手席にはジョージがいた。

ところでロンたちは、ハリーの窮状をどこまで知っていたのだろう。
マグルの面前で魔法を使ったとして、ハリーに警告状が来たことを、ロンたちは魔法省に勤める父親から聞いた。でもそれだけで、助けに来ようと思ったのだろうか? ドビーがやってきたことも、それが原因でハリーが部屋に閉じ込められ、飢え死に寸前であることも、ロンたちは知らないはずだ。
ただ、いくら手紙を出してもハリーから返事がないことで、何かあったのではと心配したはずだし、それがハリーを訪ねてくる動機になったのだろう。そして、窓の鉄格子を見た時、ハリーがどんなめにあっているのかをある程度察したのに違いない。

ここで、魔法界のおもしろいルールが語られる。
車が空を飛ぶようにするには魔法が要る。しかし、その車を飛ばすことは、魔法を使うという定義にあてはまらないのだ。この時点ではロンはもちろん、フレッドとジョージも未成年だ。しかし車を飛ばすことは、魔法を使うわけではないので、違反にならないらしい。
そうすると、「賢者の石」「死の秘宝」でハグリッドがバイクで飛ぶのも違法じゃない。また、「死の秘宝」での「7人のポッター作戦」の時にほうきやセストラルに乗って飛ぶのも、魔法を使ったと検知されることはないわけだ。これだけ長い物語でありながら、設定が一貫しているのはすばらしい。

教科書やほうきなど、ハリーの荷物は1階の物置の中にある。フレッドとジョージはヘアピンで鍵を開けて荷物を持ってくる。このふたりの器用さが、のちに魔法製品の発明家として花開くのだろう。

車が飛んでいる間、ハリーとロン・フレッド・ジョージはお互いに情報交換をする。
ハリーは、ドビーのことを詳しく話す。
フレッドは、屋敷妖精のことを説明する。大きな屋敷や城にいる。魔力を持っているが、普通は主人の許しがないと使えない。ハリーを恨む誰かが、ハリーのじゃまをするためにドビーを送り込んだのではないか。
ジョージはルシウス・マルフォイの話をする。例のあの人の信奉者だったが、あの人が消えたあと、すべて本心じゃなかったと言い訳した。ロンの父はそれをウソだと思っている。
ロンの父についても、ハリーは(そして読者も)ここで予備知識を得る。勤務先は魔法省のマグル製品不正使用取締局。アーサーの父とパーキンスという老人とふたりだけの部署だという。魔法をかけた品でマグルが異常な体験をしたら、記憶を消したり事実をもみ消すのはこの部署の役割らしい。

ロンの家がオッタリー・セント・キャッチポール村の近くにあるという説明が出てくるが、これは実在の村だろうか。たぶん、架空の名前なのだろう。そしてここは、ハリーの家からどれくらい離れているのだろう。
この章に「国中の空の半分も飛んでくる」というロンの母のせりふがあったが、これはイギリス本島の東西の幅の半分という意味だろうか。それなら、100キロか150キロというところかな? 

そして、ハリーたちはロンの家に着く。車をこっそり車庫に戻して家にそっと入るつもりでいたウィーズリー兄弟だが、母親がまちかまえていた。