ハリー・ポッターと秘密の部屋 第3章(後半)

「隠れ穴」と呼ばれるウィーズリー家にやってきたハリー。勝手に車を持ち出して家を空けたことで、ロンたち3人は母親にこっぴどく説教される。しかし彼女はハリーにとても優しく接する。彼女がハリーの皿にソーセージや目玉焼きを入れるくだりは、質素な食材であってもせいいっぱいの歓迎をしたい彼女の気持ちがよく表れている。

食後に「庭小人駆除」が始まるのだが、庭小人はちゃんとしたせりふを言う。人間のことばで意思疎通できる存在に、まるで害虫を対象にするような「駆除」という表現は似合わない。de-gnomingは「駆除」ではなく「追い払う」というような訳語を使うべきではなかったか。

庭小人を追い払っている間に、ロンの父が帰宅する。夫婦の会話から、父のファーストネームがアーサー、母のそれがモリーだとわかる。
この夫婦のやりとりはユーモラスだ。建物のたたずまい、庭のようす、夫婦のやりとり・・・それら全部からハリーは、ダーズリー家とは正反対の暖かさを感じたことだろう

このあとジニーが顔を見せるが、ハリーを意識しすぎてすぐ引っ込んでしまう。ここを読んでいる時には、まさかジニーがこの巻のキーパーソンになるとは想像もしなかった。

ロンが自分の部屋を見せる。部屋中がひいきのクィディッチチームのシンボルカラーで覆われている。チーム名は Chudley Cannons。この原作者は頭文字をそろえるのが好きで、この章に出てくる漫画の書名も、次章にあるロックハートの著書も頭韻を踏んでいる。このチーム名もそうなのだろう。
「ランキング9位だ」とロンは言うが、全部でいくつのチームがあるのかわからない。ま、下位であることはまちがいないだろう。「死の秘宝」のスネイプの記憶の中でダンブルドアは「わしに死が訪れるというのは、チャドリー・キャノンズが今年のリーグ戦を最下位で終えるというのと同じぐらい確か」と言っている。ダンブルドアが引き合いに出すぐらい、弱いチームだということか。

ハリーがこの部屋にどんな印象を持ったのか、ロンはとても気にしている。ロンという子は、自分が他人からどう評価されているかを、必要以上に気にする性格なのだ。それは「不死鳥の騎士団」での試合ぶりに顕著に表れるのだが、ここですでにちゃんと描写されている。原作者がひとりひとりの性格を、最初からきちんと設定していたのがわかる。