ハリー・ポッターと秘密の部屋 第4章(前半)

ダーズリー家にドビーがやってきたのはハリーの誕生日だったから、7月31日だ。この日にハリーは自室に閉じ込められ、3日後にロンたちが助けに来た。
そうすると、ハリーは8月4日前後から9月1日まで、ウィーズリー家に居候していたことになる。

ウィーズリーの一家は、全員がハリーに好意的で、ハリーはそれを不思議がっている。
モリーは1年前に駅でハリーに出会った時から良い印象を持っていたようだ。アーサーはマグルの器具や装置にふだんから関心が深いので、マグルの生活についてハリーから聞くのが楽しいらしい。それに、かなりあとになってわかることだが、この夫妻は第一次不死鳥の騎士団のメンバーで、モリーは弟をヴォルデモート一味に殺されている。1歳の時にヴォルデモートをやっつけたハリーは、当然彼らにとって英雄だ。しかも息子のロンが、ハリーといっしょに賢者の石を守ろうとして戦ったのだから、ハリーを歓迎するのも無理はない。

ウィーズリー家に来て約1週間、学校から手紙が来る。
アーサーが「ダンブルドアは君がここにいることをもうご存知だ」と言う。これもあとになってわかるが、フィッグばあさんがハリーの様子をダンブルドアに知らせていたのだろう。それに、魔法界のふくろうは、特定の人物の居場所を探し当てる能力を持っているはずだが、それがわかるのは次の卷になってからだ。

学校からの手紙には教科書のリストがあり、「ギルデロイ・ロックハート」という人物の著書が7冊も並んでいる。書名がそれぞれ頭韻をふんでいて、日本語訳もそれをうまく処理している。

ここでハリーは、ロン・フレッド・ジョージの会話から、15歳で受けるOWL試験というものがあること、ビルとパーシーが12科目全部合格したことを知る。
またこの3人は、両親がどうやって教科書などのお金を工面するのかと心配している。それを聞いて、ハリーは居心地の悪い思いをする。ここを読んで不思議に思ったのは、なぜハリーが「自分の分の食費だけでも受けとってください」とモリーに言わないのか、ということだ。ハリーは孤児だがお金に不自由はしていないし、何週間も居候するなら、食費ぐらい入れるのが当然じゃないのか。
あとの巻で、食べ物や飲み物を魔法で増やすことができるとわかるが、この時点でハリーはそれを知っていたのだろうか?

ウィーズリー家の面々とハリーは、教科書を買うためにダイアゴン横町へ行くことになる。ここでハリーは(そして読者も)「煙突飛行粉」という魔法道具の存在を知る。暖炉から暖炉へ高速で移動するための粉だ。
暖炉の灰にむせて行き先をちゃんと発音できなかったハリーは、知らない場所に出てしまう。何か怪しげな店だ。そこでドラコとその父を見かける。ルシウス・マルフォイは、ここが初登場だ。
この店の描写に、呪われたネックレスが登場する。そのそばにキャビネット棚があり、ドラコが興味を示す。こんなところに「謎のプリンス」の巻へのさりげない伏線があったとは!

こっそり店を出たハリーだが、どうやってダイアゴン横町に行けばいいのかわからない。そこへ幸運にもハグリッドがやってくる。そしてさらに幸運なことに、ここ「夜の闇横町」は、ダイアゴン横町のすぐ近くだった。
ハグリッドは「肉食ナメクジの駆除剤を探しとった」「やつら、学校のキャベツを食い荒らしよる」と言う。え? 肉食なのにキャベツを食べるの? わざと矛盾したせりふを言わせているのかもしれないが、作者の意図がわからない。
「賢者の石」でハーマイオニーが解いたびんのパズルでも、つじつまの合わない部分があった。調べてみたら原文には問題がなく、日本語訳が間違っていた。それを思い出し、原書をあたってみたが、この「肉食ナメクジ」は誤訳じゃなさそうだ。結局、疑問は解けない。