ハリー・ポッターと秘密の部屋 第2章(後半)

台所に置いてあったデザートをドビーが床に落とすのに使った魔法は、浮遊術という名前らしい。物を浮かせて移動させ、そこで落としたのだ。ドビーが呪文を口にした形跡はない。ほかの巻でも、屋敷妖精が呪文をとなえる描写はないので、一般に屋敷妖精は呪文なしで魔法を使えるのだろう。

台所の音にバーノンとペチュニアがかけつけると、ハリーがホイップクリームをかぶって立ち尽くしていた。状況としては、ハリーが自分の意志で台所にやってきていたずらをしたとしか見えない。バーノン叔父がお客に言い訳して何とかその場を収めた時、ふくろうが飛んでくる。
ここで、ふくろうが手紙をお客であるメイソン夫人の頭の上に落として飛び去るというのは、魔法界のふくろうのふるまいとして不自然だ。ホグワーツの大広間で、ふくろうたちはちゃんと宛名の人物の前に舞い降りていたではないか。もう少し自然にできなかったのか? たとえば窓から飛び込んできたふくろうがメイソン夫人の頭をかすめてハリーの前に手紙を落とし、モップを手にしていたハリーが一瞬遅れたためにバーノンが手紙を奪う、という流れでよかったのに。
メイソン氏の「妻は鳥と名のつくものは、どんな形や大きさだろうと死ぬほど恐がる」も不自然すぎる。カナリヤやすずめを恐がる人がいるんだろうか? そんな大げさな設定にせず、「妻は以前にふくろうにおそわれたことがあって、ふくろうを死ぬほど恐がるんだ」ということにすればよかったのに。ふくろうは猛禽だから、子育て中なら巣のそばを通る人間に怪我をさせてもおかしくない。

ところでこのふくろうが運んできた手紙は、魔法省の「魔法不適正使用取締局」という部署からの警告状だった。未成年が魔法を使うこと、マグルに気づかれることは、それぞれ別々の法律で禁じられているらしい。
魔法省が違反行為(と思えるもの)をどうやって検知したのかは、最後までわからない。そして、ふくろうがどうしてこんなに早く警告状を持ってこられるのかも不思議だ。
魔法省には大きな地図があって、違反を検知したら自動的に番地などが表示されるのだろうか? ふくろうは魔法省から飛び立つわけではなく、目的地に近い郵便局(あるいは郵便局にあたる施設)から飛び立つのだろうか。マグルの電報配達と同じような仕組みで。

ハリーが魔法を使ったわけではないのに、誤解されて警告を受けるのはかわいそうだと思う。でも、学校の外で魔法を使ってはいけないとバーノンたちにばれたことは、まったく同情できない。これに関しては、意図的にダーズリーの家族をだましたハリーの方に非がある。ダーズリー家の数々のいじわるをさしひいても、やっぱりハリーが悪い。

バーノンは窓に鉄格子をとりつけ、ハリーを2階の部屋に閉じ込める。「おまえはもうあの学校には戻れない」というバーノンのせりふからすると、夏休みが終わってもハリーを解放する気はなさそうだ。
「賢者の石」でもここでも、ハリーをホグワーツへ行かせまいとするバーノンの執念はすさまじい。
ハリーが嫌いならさっさとホグワーツへ追い払ってしまえばいいのにと、ずっと不思議だった。
「不死鳥の騎士団」37章で、ハリーは夏休みに必ずダーズリー家へ帰らないといけないという説明を読み、やっと納得がいった。
もしハリーをホグワーツへやってそのまま戻ってこないのなら、バーノンは喜んでハリーを追い出したのではないか。しかしハリーは毎年夏休みに戻ってくる。そのたびにより強い魔法を身につけて帰ってくる。それを考えると、ホグワーツへは行かせずにハリーから「魔法」をたたき出すのがバーノンにもペチュニアにも最善だったのだ。

現時点でのハリーはそんなことを知らない。このまま飢え死にするかもしれないと絶望している。
この時、相棒であるヘドウィグがハリーの巻き添えで飢え死にすることは心配しなかったのだろうか。
だいたい、ハリーはいつもヘドウィグに冷たいし、イライラをヘドウィグにぶつけることもよくある。わたしは動物に生まれ変わっても、ハリーのペットになるのはごめんだ。

話は戻って・・・閉じ込められて三日目の夜、ロンとウィーズリーの双子が助けにやってくる。