ハリー・ポッターとアズカバンの囚人(第1章後半)

エロールが運んできたのは、ロンの手紙と誕生日プレゼントだった。
次にハリーはヘドウィグが運んできた包みを開ける。それはハーマイオニーの手紙と、やはりハリーへの誕生日プレゼントだった。

ハーマイオニーの手紙でおどろいたのは、ヘドウィグが自分の意志で、フランスで休暇を過ごしているハーマイオニーのところへやってきたことだった。
魔法界の郵便は、相手がどこへ移動しても異動先へ届く。それは「賢者の石」第3章で、すでに読者にはわかっていた。だから、もしハリーがハーマイオニーに手紙を届けるようヘドウィグに頼み、ヘドウィグがフランスにいるハーマイオニーを探し当てるというのなら理解できる。いや、ほんとうは理解できないけれど、魔法界というのはそういうところだと納得はできる。
しかし、ハーマイオニーがハリーに手紙を書くことを期待して、ヘドウィグが自分の判断でフランスまで行くというのは、やっぱり驚く。

ハーマイオニーの手紙に書かれていることは、いかにもハーマイオニーらしい。ロンはエジプトでいろんなことが勉強できてうらやましい。日刊予言者新聞を定期購読している。フランスで新しく知ったことを加えて、魔法史のレポートが長くなった、などなど。
そして、ハーマイオニーからのプレゼントはほうき磨きセットだった。自らはクィディッチをしない彼女が、ハリーならこのプレゼントを喜ぶだろうと選んだことに感動した。

最後のふくろうは、ホグワーツから飛んできた。荷物を開けると、中にあったのは本で、まるであごがあるかのようにかみついた。背表紙を上にして立ち、かにのように横ばいした。本を押さえつけ、ベルトで縛って、ハリーはやっと本との格闘から解放された。本といっしょに送られてきたハグリッドの手紙には「来学期役に立つぞ」と書かれている。

ハグリッドからのプレゼントといっしょに学校のふくろうが運んできたのは、教科書のリストと、ホグズミート行きの許可証だった。保護者の署名が要るというのだ。バーノンとペチュニアが簡単にサインしてくれとは思えない。
思いがけない誕生日プレゼントの喜びと、許可証のサインをどうするかの心配との両方をかかえて、ハリーは13歳の誕生日を迎えていた。

羽のふくろうがやってきたのは、午前1時を少し過ぎた頃だ。
普通ならハリーは眠っている時間だろう。もしハリーが起きていなかったら、弱り切ったエロールはどうなったのだろう?
もう、エロールには無理をさせないでほしい。