ハリー・ポッターとアズカバンの囚人(第3章後半)

パブ「漏れ鍋」の入り口で待っていたのは、魔法大臣のコーネリウス・ファッジだった。
ハリーとは、この時実質初対面。ハリーが初めて大臣を見たのは「秘密の部屋」14章、ハグリッドの小屋でのことだったが、この時ハリーは透明マントに隠れていたから、ファッジは知らないのだ。

「ナイト・バスがハリーを拾ってくれてうれしい」というファッジのせりふや、パブの店主のトムが「大臣、つかまえなすったかね!」と声をかけているところを見ると、ハリーがこのバスで来ることはすでにわかっていたと思われる。どうやって知ったのかはわからないが。
バスの運転手のアーニーと車掌のスタンが、荷物を運び込んでくれた。

トムの案内でファッジとハリーが部屋に入る。トムがパチンと指を鳴らすと、暖炉の火が燃え上がった。
「賢者の石」ではハグリッドがピンクの傘(実はハグリッドの杖が入っている)を使ったが、トムは杖を使わずに暖炉に火をつける力を持っている。
「ミス・マージョリー・ダーズリーの事件は処理済みだ」とファッジは言った。マージおばさんの正式な名前はマージョリーらしい。それに、おばさんが独身というのもここではっきりする。もっとも、夫がいるような話し方ではなかったが。
「魔法事故巻き戻し局」から2名をプリベット通りに派遣した」「記憶は修正された。事故のことはまったく覚えていない」
なるほど、魔法事故巻き戻し局という部署が魔法省にあって、マグル界で魔法にからむ事故がおこった時に出動して記憶を書き換えるのだ。
今度の場合は、マージおばさんの記憶だけを書き換え、ダーズリー夫妻の記憶はそのままだった。「不死鳥の騎士団」2章で、バーノンがマージの事故を蒸し返しているのだから。

マージの事件のことを「あんなちっぽけなことで君を罰したりはせん」「あれは事故だった」とファッジが言い、ハリーが処罰されないことがはっきりする。ブラックがハリーを狙っているという状況だからファッジは甘いのだが、この時点のハリーはまだ知らない。
ここでハリーは、ホグズミード行きの許可証にサインしてほしいとファッジに頼む。わたしはあきれた。筋ちがいもいいところだ。当然ファッジは拒否した。ファッジが拒否した理由は、自分がハリーの保護者でないことよりも、ハリーがホグワーツ城を出てうろつくことの危険の方が大きかっただろう。

ハリーは残りの夏休みの2週間を、漏れ鍋で過ごすことになった。ここはパブだけでなく、ホテルも兼ねているらしい。トムに案内されて自分の部屋に着くと、ヘドウィグが来ていた。
ハリーはヘドウィグに「一週間だけ、どこかへ行ってくれないか」と頼んでいた。あれからちょうど一週間たつ。ハーマイオニーの避暑先を勝手に訪ねるほどのヘドウィグだから、ハリーが漏れ鍋にいることもすぐわかったのだろう。ただ、どのふくろうでもこんなふうに主人を探し当てるわけじゃないようだ。トムが「ほんとうに賢いふくろうをお持ちですね」とほめていたから。