ハリー・ポッターと秘密の部屋 第7章(前半)

二年生になって一週間。休みだと思っていた土曜日に、ウッドに起こされる。クィディッチの練習をするというのだ。ベッドを出て、ほうきを手に練習場へ行こうとすると、コリン・クリービーにつきまとわれる。コリンはハリーのファンで、ハリーのことなら何でも聞きたがる。マグル生まれのコリンに、ハリーはクィディッチのルールを説明するはめになる。このくだりは、原作者から読者へのサービスではないだろうか。「賢者の石」を飛ばして「秘密の部屋」を読む読者、また「賢者の石」は読んだがよく覚えていない読者のために、復習材料として、コリンがあれこれ聞く場面を作ったのではないだろうか。

グリフィンドールチームが練習を始めようとしたところへ、スリザリンチームがやってくる。スネイプが特別に競技場の使用をスリザリンに許可したこと、ドラコ・マルフォイがスリザリンのシーカーになったことがわかる。前年のスリザリンのシーカーはテレンス・ヒッグズという生徒だったはずだが、卒業したのだろうか。

そして、スリザリン全員が、高級なほうき「ニンバス2001」を持っている。ドラコの父親が買ってくれたのだという。
ここで、ささやかな疑問がふたつ。
ひとつは、ドラコの父の職業。マルフォイ家が金持ちだという描写はあちこちにあり、「死の秘宝」ではマルフォイ家の大邸宅が描写されている。母親は専業主婦のようだが、父親も働いているようすがない。リアル世界のイギリスの貴族はーーイギリスに限らないがーー領地を持っていて、そこからの地代や産物が主な収入源になっているようだ。マルフォイ家も、領地を持つ貴族のイメージで描かれているのだろうか。
もうひとつの疑問は、ほうきの性能に左右されるクィディッチを、果たしてスポーツと呼んでいいのかどうかということだ。もちろん、陸上競技なら靴の性能が、水泳なら水着の性能が勝負に影響する。しかしハリー・ポッターシリーズを読んでいると、ほうきの性能の差が試合の結果に与える影響が大きすぎる。
昨今、日本のプロ野球界で統一ボールの性能が問題になったが、クィディッチでも、試合には統一した規格のほうきを使うべきだろう。でないと、スポーツとしての公正さが担保できない。
でもそうすると、ストーリーのおもしろさが減ってしまうのかな。

ロンのほうきをばかにしたドラコに、ハーマイオニーが「グリフィンドールの選手はお金で選ばれていない。純粋に才能で選手になったのよ」と言い返す。
痛いところをつかれたドラコは、「穢れた血」とハーマイオニーをののしる。
ハリーは知らなかったが、これはいちばんひどい侮辱のことばだった。ロンは思わず杖を取り出し、ドラコの顔に向かって攻撃するが、逆噴射して自分が呪いにかかってしまった。
杖が逆噴射したことは、16章でロックハートが忘却術をかけようとする場面の伏線になっている。そして「穢れた血」というののしりは、ハリーの母がスネイプと決別する直接の原因となったことが「死の秘宝」でわかる。