ハリー・ポッターと秘密の部屋 第7章(後半)

前回に書いた「穢れた血」だが、mudblood をこう訳したのはうまいと思う。この訳者の日本語のセンスにはついていけないと思う部分が多いが、たまには感心させられる時もある。

ロンがマルフォイにかけようとした呪いの名称は、小説のどこにも見つからなかった(わたしが見逃しただけかもしれない)。そして、この呪文をかけた時、ロンは「マルフォイ、思い知れ!」と言っただけで、呪文を唱えていない。この作品に出てくる魔法には、呪文を唱える魔法と呪文が要らない魔法とがあるらしい。例えば「姿くらまし」は呪文を使わない。
ハーマイオニーは「あの呪いって、ただでさえ難しいのよ。まして杖が折れてたら…」と言っている。難しいということは、まだ授業で習っていない術だろう。ハーマイオニーは本から知識を得たと思われるが、ロンはどうしてこの術を知っていたのか? フレッドかジョージが誰かに使うところを見たことがあるのかもしれない。

「ハグリッドのところへ連れて行こう。一番近いし」というハリーの提案で、ハリーとハーマイオニーは、ナメクジを吐き続けるロンをハグリッドの小屋へ連れて行く。この小屋とクィディッチ競技場は近いという設定になっているらしい。
しかしハグリッドは治療法を知らないのか、あるいは治療法がないことを知っているのか、「みんな吐いっちまえ」としか言わない。
ロックハートが無能なことを、ハグリッドも知っていたようだ。「闇の魔術に対する防衛術」の科目は縁起が悪いというのでなり手がなくなった、ロックハートしかいなかったとハグリッドは言う。ここで「人っ子ひとりおらんかったんだ」というハグリッドのせりふは、日本語として変だ。こんな時に使う表現ではあるまい。

「闇の魔術に対する防衛術」の教師は、どの人も一年たつかたたないかに辞めるはめになる。その理由がはっきりするのは「謎のプリンス」20章だ。

車で暴れ柳につっこんだ処罰は、ロンがナメクジの呪いの逆噴射を浴びた日の夜に実施される。ロンはフィルチのところでトロフィー磨き、ハリーはロックハートの手伝い。
ロンがこの日にトロフィー磨きをやったことが、後にトム・リドルにつながっていく。ロンは作業中にナメクジの発作におそわれてネトネトを吐き、そのために特別功労賞の盾を何度も磨くはめになった。この章にはまだ名前がでてこないが、それがトム・リドルの受けた賞だった。

そしてハリーは、ロックハートの部屋で不思議な声を聞く。自分にしか聞こえないらしい。この声の正体は、16章でやっと明らかになる。