ハリー・ポッターと秘密の部屋 第8章(後半)

「絶命日パーティー」の描写が続いている。
わたしはここを読むまで、魔法界のゴーストは地縛霊みたいなもので、ホグワーツの幽霊はホグワーツから離れられないのだと思っていた。しかしニックが「『めそめそ未亡人』は、はるばるケント州から来てくれました」と言っている。未亡人はイギリス南東部からスコットランドまで、かなりの距離を移動したことになる。どうやって来たのだろう。空中を飛んできたのか、瞬間移動か。そもそも、ニックとどういう関係なのだろう。親戚か?
これらの答えは作品のどこにもない。ストーリーに直接関係がないからだろう。

絶命日パーティーの会場から大広間へ戻ろうとして廊下を歩いていた時、ハリーの耳にあの不思議な声が聞こえる。声は上へと移動している。ハーマイオニーとロンには聞こえていない。
その理由がわかるのは、16章になってから。バジリスクは水道の配管を使って移動していた。ハリーに聞こえたのはヘビ語で、だからロックハートにもハーマイオニーにもロンにも、あの声は聞こえなかった。
もしごく近くで聞いたのなら、「シューシュー」という音だけでも捕らえることができただろう。しかし、パイプ越し・壁越しでは無理だった。

この時ハーマイオニーが、壁に書かれた文字を見つける。
「秘密の部屋は開かれたり 継承者の敵よ、気をつけよ」
そして、ミセス・ノリスが硬直してぶら下がっていた。
この時、「ここにいない方がいい」と判断したのはロンだった。ハリーがここにいては疑われる、ととっさに判断したのだ。しかしもう遅かった。生徒たちが集まってきた。

ミセス・ノリスが石にされただけで死なずに済んだのは、バジリスクの目を直接見なかったからだということが16章でわかる。ミセス・ノリスがぶら下がっていた場所は、この章には書かれていないが、マートルがいたトイレのそばだった。絶命日パーティが行われていた地下室からとびだしたマートルは、自分が住むトイレに戻り、水をあふれさせたのだろう。実体のないゴーストがどうして水を動かすことができるのか、わたしには理解不能だが。

そこへやってきたドラコが、猫を見てニヤッと笑ったのはなぜなのだろう。
12章でわかるが、ドラコは「五十年前に秘密の部屋が開かれ、穢れた血がひとり死んだ」という事実を父親から聞いていた。フィルチがスクイブだということも、おそらく聞いていたのだろう。次はハーマイオニーが犠牲になるだろうと、ドラコは期待していたのに違いない。