ハリー・ポッターと秘密の部屋 第10章(前半)

ある日の「闇の魔術に対する防衛術」の授業のあと、ハーマイオニーロックハートに話しかける。手には図書室の本を借りるための許可証用紙がある。
「図書室からこの本を借りたいんです。参考に読むだけです」「禁書の棚にあってどなたか先生のサインをいただかないといけないんです」
さらにハーマイオニーは「先生の『グールお化けとのクールな探索』に出てくる、ゆっくり効く毒薬を理解するのに、きっと役に立つと思います」と付け加える。ロックハートを説得するために、ちゃんと口実も考えてきたのだ。
しかしそんな口実は要らなかった。ロックハートは気軽にサインしてくれた。

この巻におけるロックハートの存在意義のひとつは、ここでハーマイオニーにサインを与えることなのだろう。著書に書かれた数々の功績を、ハーマイオニーは事実だと信じて、ロックハートを尊敬している。おだてに弱いロックハートは、ハーマイオニーが読みたい本が何なのか深く考えずに、お気に入りの生徒の願いを聞き入れる。
他の教師なら簡単にサインなどしないはず。無能教師ロックハートの物語上の役目は、ここでサインをすることにあった。
もう一つ、より重要な彼の役目は、ハリーとロンに忘却術をかけようとすることだ。しかしそれは16章になってからの話である。

首尾よく借りた本は「最も強力な魔法薬」という書名だった。前の章のハーマイオニーのせりふでは「最も強力な薬」と訳されている。原文はどちらも Moste Potente Potions だ。わざわざ訳し分けたわけではなく、その場その場の思いつきで訳しただけだろう。この部分に限って言えば、実害はないが。
この作品の日本語訳は、こういうところが雑だ。リリーがペチュニアの妹になったり姉になったり、マージがバーノンの姉だったり妹だったり、同じ猫の名前がチブルスだったりティブルスだったり。
しっかりした校正者のいる出版社なら、こんなぶざまな結果にはなるまい。

3人はマートルのいる故障中のトイレにこもって、本を開いてまず材料を調べる。クサカゲロウヒル、満月草、ニワヤナギは、生徒用の棚に常備しているようだ。二角獣の角の粉末と毒ツルヘビの皮は入手困難らしい。
一角獣はいろいろな童話や絵画で見たが、二角獣というのは何だろう? 一角獣と同じように想像上の動物なのだろうか。
「材料が全部手に入れば、だいたい一ヶ月で出来上がると思うわ」とハーマイオニーが言う。その後の記述を見ても、かなり手間のかかる薬のようだ。

リジュース薬を作る作業に入る前に、クィディッチの試合が始まる。そこでハリーはひどい目にあう。また、キングズ・クロスでホームに行けなかった理由を知ることになる。