ハリー・ポッターと秘密の部屋 第11章(後半)

玄関ホールの掲示板に「決闘クラブ」のお知らせが貼り出される。
ホグワーツの生活には、よく掲示板が出てくる。一斉メールのような魔法はないらしい。
生徒たちの会話の中に「フリットウィック先生って、若いとき、決闘チャンピオンだったんですって」というせりふが出てくる。ストーリーに関係はないが、フリットウィックに関する個人情報は少ないので貴重なせりふかな、と思う。

大広間はテーブルが取り払われ、金色の舞台が出現していた。
魔法では、テーブルや椅子を一瞬で出したり、また一瞬で消したりできる。これはうらやましい。
そしてその舞台に、ナルシストのロックハートがいる。後ろにはスネイプ。ロックハートが提唱者で、スネイプは手伝いらしい。

スネイプが「エクスペリアームズ!」と叫び、紅の光線が出て、ロックハートが吹っ飛ぶ。この呪文はここで初めて出てくるが、今後いろいろな場面でハリーたちが使うことになる。
武器を取り上げるだけの呪文のはずだが、ロックハートはなぜ吹っ飛んだのだろう? スネイプの呪文が強力だったということか?
そして、紅と赤とはどう違うのだろう?

マルフォイとハリーが決闘をすることになり、マルフォイはサーペンソーティアの呪文で杖先から蛇を出す。
椅子やテーブルならともかく、生きているものを出したり消したりできるのは不思議だ。たとえば、もし鶏を杖から出すことができるなら、ヒヨコから育てる手間が要らないじゃないか。そういえば、「謎のプリンス」でハーマイオニーは小鳥を出していた。
作品の中に具体的な説明がないので想像だが、杖から出した生き物はほんとうの生き物ではなく、短時間で消えてしまうのだろう。たとえば杖から魚を出してそれを料理して食べるということはできない。もしそれができるなら、「死の秘宝」でハリーたちが食料不足に悩むはずがないのだから。

マルフォイが出した蛇が、ジャスティン・フィンチ=フレッチリーを攻撃しようとする。ハリーは蛇に「離れろ!」と言う。(原文は leave him だが、「手を出すな。去れ!」という日本語訳はどうもしっくりこない。)蛇は急に従順になる。
それを聞いた生徒たちやスネイプは、気味悪いものを見るような目でハリーを見た。ジャスティンは怒って立ち去る。ハーマイオニーとロンはその場からハリーを連れ出す。

ハリーは普通に英語をしゃべったつもりでいたが、ほかの人には「シューシュー」という音にしか聞こえなかった。それが蛇語だと、魔法界生まれの者にはわかった。ハーマイオニーはマグル生まれだが、本で読んで知っていた。他の生徒たちが恐怖の感情でいるのに、ジャスティンだけは恐怖でなく怒りを抱いていたのは、彼がマグル生まれで蛇語を知らないからだろう。
ハリーも読者も、ここで蛇語の存在を知る。今思えば「賢者の石」で動物園の蛇と話が通じたのは、ハリーがパーセルマウスだったからだ。蛇語を話せる魔法使いはめったにいない。そして、スリザリンはパーセルマウスとして有名だった。

生まれつき何かの言語を話せるという設定は、現実にはあり得ないけれど、魔法界ならあってもいいと思う。でも、本人は英語をしゃべっているつもりなのに違う言語だったというのは、いくら魔法界でも納得いかない。無理がありすぎるんじゃないだろうか。

図書室にハッフルパフ生がかたまってしゃべっている。「太った男の子」アーニーが、ハリーを襲撃事件の犯人だと言う。それに対して反論めいた意見を言うのがハンナだ。ハンナはストーリーにはまったくからんでこないが、時々登場はする。ここでハリー寄りの発言をしているのにちょっと注目。原作者による後日談では、ネビルと結婚するのだから。

図書室を出たハリーは廊下でハグリッドに会う。ハグリッドは殺された鶏をぶら下げ、「鳥小屋のまわりに魔法をかけるお許しをもらわにゃ」と言う。つまりハグリッドはふだんから、魔法を使いたい時にはその都度校長に許可をもらっているのだろう。

ハグリッドと別れた直後、ジャスティンが石にされてころがっているところへ出くわす。そばにほとんど首なしニックが黒くなって浮いていた。
この場のハリーは、どこから見ても現行犯だ。そうでなくても、蛇語が理由で疑われているのに。
マクゴナガルが現れ、ハリーは校長室へ連れて行かれる。
この章の後半は、息つく間もない展開、という印象を受ける。