ハリー・ポッターと秘密の部屋 第14章(前半)

前回のブログに書き忘れたが、ハリーが日記の中に入ってリドルの記憶を見たのは、6月13日の日付のページだった。イギリスでは学年末に近い。ハグリッドがこの時退学になったのなら、3年生の終わり頃までの在学ということになる。基本的な魔法は覚えたが、姿くらましのような高度な魔法はまだ使えないという時期だった。

ハリーはリドルの日記の中で見たことを、ロンとハーマイオニーに話した。秘密の部屋を開けて怪物を出したのがハグリッドだということを3人は信じた。ただ、人を傷つけようとか殺そうとかいう意図がハグリッドにないことも、3人はわかっていただろう。

ジャスティンと、ゴーストのニックが石にされてから、4ヶ月は何事もなく過ぎた。そしてイースター休暇。まったく宗教が登場しないこの作品だが、クリスマスの行事だのイースターの休暇だのがちゃんとあるのはおもしろい。キリストのキの字も語られないクリスマス、復活の意味を誰も考えないイースター。現実のイギリス人の多くも、そうなのだろうか?

イースター休暇には、3年生に選択する科目を決めなくてはいけない。1年目と2年目は必修科目だけだったが、3年目からはそれに選択科目が加わるらしい。
ハリーたち3人もあれこれ思案するが、気の毒なのはネビルだ。「親戚中の魔法使いや魔女が、手紙で、ああしろこうしろと、勝手な意見を書いてよこした」とある。たぶんネビルは小さいときから親戚連中にあれこれ言われたり期待をかけられたりして、萎縮してしまい、実力を出せない子に育ったのだろう。あとでわかるが両親は優秀な闇払いだったし、祖母もなかなか強い魔法使いだ。血統が良すぎるのもよしあしだ。魔法界だけじゃない。親や兄姉が優秀なために期待されすぎて悩む子は、どこの世界にもいる。

選択科目について、パーシーがハリーに助言するせりふの中に「魔法生物飼育学」という科目名が出てくる。
第8章に「フレッドは『魔法生物の世話』のクラスから、火の中に住む、燃えるようなオレンジ色の火トカゲを…」と書かれていた。変だなと思って原文をあたると、どちらも同じ Care of Magical Creatures だ。こういう訳語の不統一が、この作品にはやたらと多い。同時通訳では許されるかもしれないが、翻訳でお金をもらう人のしごととしてはお粗末だ。

ある金曜日、ハリーがクィディッチの試合の練習から戻ると、寝室のハリーのベッドやトランクが荒らされていた。
ローブのポケットが全部ひっくり返っているのを見たロンが「誰かが何かを探したんだ」と推理する。ロンは時々、こういう推理能力を発揮する。
リドルの日記がなくなっていることに、ハリーは気づく。

ハーマイオニーは「グリフィンドール生しか盗めないはずでしょ。他の人は誰もここの合言葉を知らないもの」と言う。
リジュース薬の時にも不自然に思ったが、ホグワーツでは、他寮の生徒を訪問することはないのだろうか。あの時ハリーとロンは、スリザリン寮の場所さえ知らなかった。
この時ハリーの持ち物を荒らしたのは、ハーマイオニーの言うとおり、グリフィンドール生だったが、それが読者にわかるのは17章になってからだ。