ハリー・ポッターと秘密の部屋 第15章(前半)

学校からダンブルドアとハグリッドがいなくなった。ハーマイオニーは石にされたまま、医務室で面会謝絶になっている。ハリーとロンにとって、ゆううつな日が続くのは当然のことだ。
しかし、当然と言えない記述もある。たとえば「他のほとんどのグリフィンドール生は、先生に引率されて、教室から教室へ移動するのを喜んだが、ハリーは、いいかげんうんざりだった。」
安全のために団体行動をするより、危険でも勝手に動き回りたい。これがハリーの性格であり、この作品を読んでいて何度もイライラするのは、彼のこの性格のせいだ。ま、この性格のおかげで、ストーリーが進んでいくのだけれど。
(キャラクターにブレがないという点でも、この原作者はうまい!)

ドラコは父親がダンブルドアを嫌っているし、日頃からハグリッドをさげすんでいるので、ふたりの不在を喜んでいる。「マクゴナガルは単なる穴埋め」というドラコのせりふによれば、今はマクゴナガルが臨時に校長の職務を遂行しているらしい。

「次のは死ぬ。(中略)グレンジャーじゃなかったのは残念だ」というドラコのことばに、ロンは逆上して、ハリーとディーンに止められる。この巻には、ロンがハーマイオニーを好いていることをにおわせる描写がいくつかあるが、ここもその一つ。もちろん、ロン自身はまだ意識していない。

薬草学の授業でアーニー・マクミランが、ハリーを襲撃犯だと疑ったことをわびる。ハーマイオニーとハリーの仲の良さを知っているので、ハリーが犯人のはずがないと判断したのだ。潔く謝るところに好感がもてる。アーニーはのちにDAにも参加していたっけ。

「ハリー、君はマルフォイだと思うかい?」とアーニーが聞き、ハリーが明確に否定したので、アーニーもハンナ・アボットもおどろく。ハリーとロンはポリジュース薬を使ってドラコの本音を聞き出しているから、きっぱり No と言えたのだが、アーニーとハンナは不思議に思っただろう。
ハンナ・アボットはこんなふうに、ところどころに登場する。ハリーに好意的な発言をすることもある。ただし、ストーリーの進行にはいっさいからまない。原作者は、どこかの巻でハンナを活躍させるつもりだったのかもしれない。

この授業中、ハリーとロンは大きなクモを見つけるが、今追いかけているわけにはいかない。禁じられた森の方向へクモが去ったことだけを確認する。
談話室に誰もいなくなる12時を過ぎてから、ハリーとロンは透明マントをかぶって外へ出る。ハグリッドの小屋へ行き、犬のファングを連れて森へ。都合のよいことにクモが2匹いた。続いて、クモの群れも。
クモの群れを追って30分ほど歩くと、何か大きな物が動いている。それは、ふたりが乗って空を飛んできたトルコ石色の車だった。
「こいつ、ずっとここにいたんだ」「森の中で野生化しちゃってる」とロンが言う。
魔法界では、自動車が野生化するのか。ガソリンが切れても大丈夫なのかな。

なつかしい車に会えてほっとした瞬間、ふたりは大きなクモにつかまってしまう。
馬車馬のような巨大なクモが、何匹もそこにいたのだ。
ふたりはクモに運ばれ、クモの長(おさ)であるアラゴグのところへ連れて来られた。