ハリー・ポッターと秘密の部屋 第16章(前半)

ハリーは50年前が犠牲者は嘆きのマートルではないかと気づき、ロンに話す。
確かめに行きたいが、犠牲者が何人も出た現在、生徒の勝手な行動は許されない。ひとつの授業が終わって次の授業のために移動する時でさえ、教師の誰かが引率するのだ。
現在の日本社会でも、凶悪事件が起こって犯人が見つからない場合、生徒が教師やPTA役員に守られて、集団で登下校することはよくある。それと同じような状況と思っていいだろう。

朝食の席で、マクゴナガルが「マンドレイクが収穫できる。今夜、石にされた人たちを蘇生させることができるでしょう」と生徒達に告げる。
期末試験が6月1日から始まるが、「その3日前」と書いてあるから、5月29日のことだ。
これを聞いたロンについて、「ここしばらく見せたことがなかったような、嬉しそうな顔をしている」と書かれている。ここも、ロンが無意識にハーマイオニーを好いていることを示す描写のひとつだろう。

そこへジニーがやってきてロンの隣に座り「あたし、言わなければならないことがあるの」と切り出す。しかしそこへパーシーがやってきて、「ジニー、食べ終わったのなら、僕がそこの席に座るよ」と言う。もちろんパーシーに悪気はないけれど、自分が犯人らしいと打ち明けるつもりだったジニーのせっかくの決心が吹き飛んでしまい、ジニーはそそくさと立ち去ってしまう。

その日の午前、授業と授業の間に、ロックハートを言いくるめたハリーとロンは、マートルのトイレへ行こうとするが、マクゴナガルに見つかり、医務室へハーマイオニーの見舞いに行きたいとごまかす。
マクゴナガルは厳格な教師だと書かれているが、ハリーのうそにこうもあっさりだまされるとは。

医務室に来たハリーは、石にされたハーマイオニーの右手に、紙切れが握りしめられているのを見つける。何とか取り出してみると、古い本のページがちぎり取られた紙片で、バジリスクという魔法生物の説明だった。その目からの光線にとらわれた者は即死すること、クモの宿命の天敵だとういうことが書かれている。そして、ハーマイオニーは手書きで「パイプ」とメモしていた。

ハーマイオニーはなぜこのページを破ったのか? 
いくら急いでいたと言っても、本を破るなんて、本好きのハーマイオニーらしくない。
もしかすると、このページをちぎりとったあと、レパロの呪文で本を元通りにして、ちぎった紙片は手元に残したのか? もしそれが可能なら、魔法界の図書室にコピー機がなくても不思議はない。
ハーマイオニーファンとしては、学校の財産である図書室の本をちぎるなんてふるまいを彼女にしてほしくないと思う。

それはともかく、ハーマイオニーが持っていた紙片のおかげで、ハリーは怪物の正体を知ったし、これまでの奇妙なできごとの説明をつけることができた。
怪物の正体は巨大な毒蛇、バジリスク。ハリーだけに聞こえた声は、怪物がつぶやく蛇語だった。
石にされた者たちは、バジリスクの目を直接見なかったので即死せずに済んだ。コリンはカメラのレンズを通して、ジャスティンはニックを通してバジリスクの目を見た。ハーマイオニーとペネロピー(この段階ではまだ名前が出ておらず、レイブンクローの監督生としか書かれていないが)は、鏡でバジリスクを見たと思われる。ハーマイオニーは、たまたま出会ったペネロピーに、角を曲がるときはまず鏡を見るように忠告したに違いない。最初の犠牲者のミセス・ノリスは、水に映ったバジリスクを見たのだ。あのとき、トイレの前の廊下は水びたしだった。
そして、ハグリッドの雄鶏が殺されたのは、雄鶏のトキの声がバジリスクにとって致命的なものだったからだ。

ダンブルドア校長は、理事会の決定で職を解かれ、学校にいない。
マクゴナガル先生に報告しようと、ハリーとロンは職員室へ行く。教師たちは城中を手分けして警戒しているらしく、職員質には誰もいない。
そこへマクゴナガルの声が、学校中にひびく。「生徒は全員、それぞれの寮に戻りなさい。教師は大至急職員室へお集りください」
「寮に戻ろうか」というロンに、「いや、ここにいよう」とハリーは言って、洋服掛けのマントに隠れる。ハリーのこういうところ、やっぱり好きになれない。生徒は全員寮に戻りなさいという指示がでているのに。

集まった教師たちに、マクゴナガル先生が報告する。
「生徒がひとり、怪物に連れ去られました」
「最初に残された文字のすぐ下に、『彼女の白骨は永遠に秘密の部屋に横たわるであろう』」
連れ去られたのはジニーだという。
そこへロックハートがやってくるが、事態を把握していない。他の教師に口々に皮肉を言われ、すぐに出ていく。
「寮監の先生方は寮に戻り、何がおこったかを生徒に知らせてください。明日いちばんのホグワーツで生徒を帰宅させる、とおっしゃってください。ほかの先生方は、生徒がひとりたりとも廊下に残っていないよう見回ってください」
マクゴナガルのこの指示にしたがって、教師は次々に出ていく。
このあと、ハリーとロンがどうやって寮に戻ったかが書かれていない。もちろん、ストーリー上は描く必要がない。というより、書いたら冗長になる。それはわかるのだが、でもわたしは気になってしかたがない。職員室に隠れていたことや、団体で移動するべきなのにふたりだけでいたことを、誰にも気づかれなかったのか?

ロンは、ジニーが「秘密の部屋」について何か知っていたのではないかと気づく。
これまで襲われたのは、マグル生まればかりだった。純血のジニーが狙われたのは、ジニーが何か秘密を知っていたからに違いない。それで、あの朝食のとき、何か言いたそうにしていたのだ。
ハリーとロンは、ほかに何も方法を思いつかず、ロックハートを訪ねてみる。ロックハートが、秘密の部屋の入り口は知っているとか、怪物と対決したいとか豪語していたからだ。
ところが…