ハリー・ポッターとアズカバンの囚人(第8章)

ルーピンの授業はその後も、おもしろかったらしい。
その授業の中に、日本の河童が出てきたことにちょっとおどろいた。本編には生息地は出てこないが(スネイプが9章で「むしろ蒙古によく見られる」と言ってはいたが)「幻の動物とその生息地」には「日本の水魔」と書かれている。

ハグリッドがどうなったかは、この章に書かれている。クビにはならず、教師を続けているが、レタス食い虫の世話ばかりやらせるつまらない授業になった。校長や副校長が授業内容や教材について助言してやらないのか? 珍しいが危険な動物と、極端につまらない動物の両極端しか教材にできないというのは、ハグリッド自身の責任より、ダンブルドア任命責任の方が重いんじゃないのか?
ところで、レタス食い虫は上記の本に「フロバーワーム」という名で出ている。

10月になるとクィディッチ・シーズンが到来した、と書かれている。週に3回の練習が始まった。
クィディッチのルールの簡単な説明がこの巻でも繰り返されているのは親切だと思う。しかし、10月に入って初めて作戦会議やら練習やらが始まるのはちょっと変だ。学校でも社会人でも、スポーツの活動って年中やるんじゃないのか? 温水プールがなかった時代の水泳部でさえ、冬には体力づくりのためのランニングなどをやっていたのに。
キャプテンのオリバーは7年生。最後のチャンスなので、どうしても優勝したい。その後オリバーはプロ入りするから、腕はたしかなのにちがいない。

グリフィンドールの談話室で、クルックシャンクスがスキャバーズを襲う。スキャバーズは整理ダンスの下に潜り込んで難を逃れる。
これがハーマイオニーとロンの対立のきっかけになるが、この時点でクルックシャンクスはどこまで知っていたのだろう? すでにシリウスと連絡をとっていたのだろうか? シリウスと意思疎通していなかったら、このねずみが動物もどきだとはわかっても、悪党だとまではわからないだろう。

翌日の変身術の授業で、ラベンダー・ブラウンが泣いていた。飼っていたうさぎが狐に殺されたと家から手紙で知らせてきたのだ。トレローニーの予言があたったと思っているラベンダーをハーマイオニーが論破する。ストーリーには直接関係ないが、この時のハーマイオニーのせりふは好きだ。
ラベンダーは「謎のプリンス」でロンと恋仲になり、ハーマイオニーをいらいらさせる。

ハリーはホグズミード行きの許可をマクゴナガルに頼もうとするが、拒否される。ま、あたりまえだけれど。
そしてハロウィンの日。みんながホグズミードに出かけたあと、校内をうろうろしていて、ルーピンに出会う。
ルーピンにお茶をいれてもらい、ハリーはまね妖怪と対決させてもらえなかったわけをやっと知る。
そこへスネイプがゴブレットに入れた薬を持ってやってくる。これが脱狼薬だとハリーにわかるのは18章になってからだ。「これを調合できる魔法使いは少ない」とルーピンは言っているから、そうとう難しい薬なのだろう。そして、スネイプは薬の調合にたけている。このことが「プリンスの教科書」の伏線になっている

夕方、ロンとハーマイオニーがホグズミードから戻ってきた。
ふたりの話から、ホグズミードには何があるかわかる。魔法の用品を売っている店、菓子屋、そして喫茶店のような店。郵便局には二百羽ものふくろうがいるという。
そのあと夕食のために大広間へ。ハロウィンのかざりつけがしてあり、ごちそうが並んでいる。
物語を読む限り、魔法界に宗教は存在しない。しかしハロウィンとかクリスマスとか、宗教行事だけはちゃんとあるのがおかしい。ま、日本もそうだけど。

楽しい気分はそこまでだった。
夕食のあとみんながグリフィンドール寮へ戻ろうとしたら、入り口の肖像画がめった切りにされ、太った婦人が消えていた。
マクゴナガルとダンブルドアがかけつけた。かけつけたといっても「次の瞬間、ダンブルドアがそこに立っていた」と書かれているから、瞬間移動したのだろう。校内では姿あらわしができないが、校長権限で一時解除できることは、「謎のプリンス」18章に書かれている。
ダンブルドアの質問に、目撃者のポルターガイスト、ピーブズが答える。「あいつはかんしゃく持ちだねえ。あのシリウス・ブラックは」と。
お尋ね者のシリウスホグワーツの敷地内どころか、建物の中にまで入り込んでいたのだ。ディメンターが見はっていない唯一のルートである、叫びの屋敷から暴れ柳の地下道を通って。しかしこのルートのことを、ハリーも読者もまだ知らない。