ハリー・ポッターとアズカバンの囚人(第9章後半)

クィディッチの試合の最初の対戦相手は、ハッフルパフのチームになった。
ハッフルパフのキャプテンは、シーカーのセドリック・ディゴリーだった。次の巻「炎のゴブレット」で重要人物になるセドリックは、ここで初めて名前が出てくる。
ここでフレッドが「二つの言葉をつなげる頭もない」と言い出すのは不愉快だ。いくら敵のチームだからって、言い方がひどすぎる。あとではっきりするが、セドリックは頭もいいし、フェアな感覚の持ち主だ。フレッドは、セドリックの人柄を知らずに悪口を言っていると思われる。無責任もいいところだ。
「優秀なシーカー」というウッドのことばが、正しい評価に違いない。

試合前日の「闇の魔術に対する防衛術」の授業は、ルーピンが休んだためスネイプが代わりに教えた。
ハリーはウッドの長話につきあって授業に遅れたが、スネイプに「すわれ」と言われたのに、立ったままで「ルーピン先生は?」と聞いている。ハリーのこういうところは大嫌いだ。ルーピンの代わりにスネイプがいたのは意外だっただろうが、そうでなくても遅刻して授業のじゃまになっているのに、なぜ黙ってすわれないのか。
スネイプは教科書の順番をとばして、狼人間について質問を始めた。なぜ彼がここで狼人間を持ち出したか、わかるのは17章になってからだ。
この授業でハーマイオニーがスネイプに言いがかりをつけられ、ロンが「答えてほしくないんなら、なんで質問したんですか?」とスネイプに反論するところはかっこいい。

第1回の試合の日。雨風の中でプレーが始まった。ハリーは眼鏡が濡れるのでまわりが見えなかったが、途中で気づいたハーマイオニーが防水呪文をかけてくれた。ハーマイオニーはいつでも、同学年の生徒が知らない呪文を独習で会得している。
雷が鳴った時、スタンドの上に黒い大きな犬が見えた。
この学期が始まる直前、ハリーはマグノリア・クレセント通りで黒犬らしい物を見た。そして、死の前兆だという犬の絵を見たし、占い学の授業では死神犬グリムにとりつかれていると言われた。そこへ犬の姿だ。実は変身したシリウスだったとあとでわかるのだが。
その直後、冷気が襲い、グラウンドに少なくとも百人のディメンターが見えた。母親の声を聞きながら、ハリーは気を失った。
この時ハリーが聞いた「どけ、バカな女め! さあ、どくんだ」というヴォルデモートのせりふは、彼が最初はリリーを殺すつもりじゃなかったことを示している。もしハリーをかばわなければ、リリーは死なずに済んだ。もっとも、母親が我が子をかばわないはずはないから、この「もし」は百パーセントあり得ないけれど。

ハリーが気づいたのは医務室だった。
ハリーはほうきから落ち、ダンブルドアが杖で術をかけたので地面に激突せずに済んだ。セドリックはハリーの異変に気づかないままスニッチを取った。セドリックは試合のやり直しを望んだが、ウッドはハッフルパフの勝ちを認めた。ふたりのフェアプレー精神に拍手をおくりたい。

ほうきから落ちて気を失っただけでもショックなのに、さらにショックなことがハリーに起こっていた。
ニンバス2000が暴れ柳にぶつかってバラバラになっていたのだ。