ハリー・ポッターとアズカバンの囚人(第12章前半)

ファイアボルトのことをマクゴナガルに言いつけたことから、ロンとハリーはハーマイオニーに腹を立てていた。ハーマイオニーは当然、自分は正しいことをしたと思っている。ハーマイオニーは談話室に現れなくなった。「ハリーとロンは、ハーマイオニーが図書室へ避難したのだろうと思い、談話室に戻るよう説得しようともしなかった」と書かれている。
確かに図書館へ行っていたのだろうが、単なる避難ではなく、ビックバークの訴訟に役立つ資料を探していたのだ。そして、ハグリッドの小屋を何度も訪ねていた。それは13章でわかる。

クリスマス休暇が終わりに近づき、生徒たちが戻ってきた。ここで「ウッドがハリーを呼び出した」と書かれている。同じ寮のはずなのに、呼び出したという言い方は不自然に思った。原文が sought out なのだから、「ハリーを探しに来た」の方がいいんじゃないか? ま、ほかの重大な誤訳・珍訳に比べたら枝葉末節だけれど。
ハリーがまたディメンターに襲われたら困ると、ウッドはいろいろ考えたようだ。ウッドの言い方を見ていると、ハリーをチームからはずすことさえ考えていたのかも知れない。しかしハリーがウッドをさえぎり、「対策を考えてる。(中略)ルーピン先生がディメンター防衛術の訓練をしてくれるっておっしゃった」と言ったので、ウッドのせりふの続きは読者にもわからずじまいになった。

ファイアボルトのいきさつを聞いたウッドは「ブラックがファイアボルトを買えるわけがない! 逃亡中だぞ! 国中がヤツを見張ってるようなもんだ!」と言う。
しかし、仮にブラックがほんとうに死喰い人だったとしたら、仲間がいないとどうして言えるだろう? 主だった死喰い人はアズカバンに収容されているが、逃れた者や改心をよそおったものもいる。それがわかるのは次の巻になってからだが、この段階でも、仲間がいないとは誰も断言できない。素知らぬ顔でほうきを注文し、ブラックの指示でハリーに匿名のまま送る人物の存在は否定できないはず。
真相は22章でわかる。クルックシャンクスがブラックに頼まれて注文書をふくろう事務所(郵便局のようなものか? しかし郵便局はちゃんと存在したが)に届けた。代金はブラックの口座から払うように指示してあったと。お尋ね者のブラックの口座が動いたのに、なぜ魔法省に届けがされなかったのか? この疑問は、「死の秘宝」でやっとわかる。グリンゴッツ銀行のゴブリンたちは、魔法省の支配を受けていないのだ。

一月の授業が始まった。ハグリッドは珍しく、生徒に受ける授業をした。みんなでたき火を囲み、火の中を動き回る火とかげを観察したのだ。
クリスマスに病気で大広間での食事に現れなかったルーピンは、授業に出てきたがまだ元気がなかった。
どこが悪いんだろう、とロンとハリーがしゃべっていると、ハーマイオニーが「あら、そんなこと、わかりきったことじゃない?」と軽蔑したように言う。この時ハーマイオニーには、ルーピンの秘密がすでにわかっていた。

そしてその週の木曜日の夜、ルーピンの個人教授が始まる。