ハリー・ポッターとアズカバンの囚人(第13章後半)

9章の対ハッフルパフ戦は豪雨と雷の中の試合だったが、今回の対レイブンクロー戰は晴天。
試合の場で、ハリーは初めてチョウと会う。日本語訳ではここでやっと、女性とわかる。「シーカーのチョウ・チャンがただひとりの女性だ」とあるからだ。ハリーはここで一目惚れするのだが、この描写はおもしろい。チョウがにっこり笑った時、「ハリーの胃のあたりがかすかに震えた。これは緊張とは無関係だとハリーは思った」と書かれている。
試合中の描写では「チョウ・チャンがすぐ後ろについてきているのに気づいた。たしかに飛行の名手だ」とある。ファイアボルトに乗っているハリーに、コメット260でついてくるのだから、客観的に見ればチョウの方が飛び上手ということになる。
チョウとハリーは「不死鳥の騎士団」で付き合い始め、間もなく別れてしまうが、チョウ自身は最終巻の戦いにも参加する。この物語の中では重要人物のひとりといっていいだろう。ただ、活躍の場はほとんどない。

試合中、3体のディメンターが地上にいるのを見て、ハリーは守護霊の呪文を発した。ちゃんとした形にはならなかったようだが、銀色のものが杖から飛び出した。そしてスニッチも取った。大きな点差をつけてグリフィンドールの勝ちだった。
ディメンターと見えたものの正体は、黒いローブをかぶった4人、ドラコ・クラッブ・ゴイル・フリントだったのだ。もし本物だったら、ハリーの未熟な守護霊では無理だったのではないか。ただ、本物ならルーピンが何とかしてくれただろう。

談話室に戻ったグリフィンドール生たちはパーティーを始めた。フレッドとジョージは「1、2時間いなくなったかと思うと」お菓子や飲み物をたくさんかかえて戻ってきた。抜け道からホグズミードへ行ったのだ。やっぱりホグワーツ校とホグズミードの距離は、徒歩30分というところらしい。ふたりはいたずらグッズをいろいろ売っているから、小づかいもたくさん持っていたのだろう。

ハーマイオニーはただひとり、パーティーに加わらず宿題をしていた。誰よりも教科をたくさんとっているから宿題も多いのだが、パーティーに参加しない本当の理由は、ロンとの仲違いだった。
夜中の1時にマクゴナガル先生がパーティーが終わらせ、みんな寝室へ引き上げた。

ハリーはロンの叫び声で目が覚めた。カーテンが切り裂かれていて、「シリウス・ブラックがナイフを持っていた」とロンが言う。他の寝室からも目を覚ました生徒が出てくる。マクゴナガル先生がすぐに戻ってきたところをみると、みんなが寝室に引き上げてからあまり時間がたっていないようだ。
ロンの訴えは最初信用されなかったが、番人のカドガン卿はマクゴナガルの質問に答えて、男をひとり通したという。その男は一週間分の合言葉を書いた紙を持っていて、読み上げたというのだ。
マクゴナガルは「(合言葉を)その辺に放っておいた、底抜けの愚か者は誰です?」と尋ね、ネビルが全身震えながら手を挙げた。
ネビルは決して「その辺に放っておいた」のではない。ベッド脇の小机に載せておいたのを、クルックシャンクスが盗み出したのだ。しかしそれが読者にわかるのは、19章になってからだ。