ハリー・ポッターとアズカバンの囚人(第15章前半)

ハーマイオニーは、ハグリッドから来た手紙をハリーとロンに見せる。
「俺たちが負けた。バックビークはホグワーツに連れて帰るのを許された。処刑日はこれから決まる」
と書かれていた。
控訴することはできるが、なんにも変わりはしないから、望みはないと言うハーマイオニー。それをさえぎってロンが「いや、変わるとも」「ハーマイオニー、今度は君ひとりで全部やらなくていい。僕が手伝う」と言う。ロンとハーマイオニーが和解した瞬間だ。
ハーマイオニーはロンの首に抱きついてワッと泣き出した。ロンはオタオタして、ハーマイオニーの頭を不器用に撫でた」と書かれている。これは、ロンとハーマイオニーが抱き合った初めての場面では? ふたりの恋心が表現されるのは「炎のゴブレット」からだが、ここがきっかけかもしれない。
ハーマイオニーはスキャバーズのことを謝る。実は謝る必要がなかったことはあとでわかるが。

裁判に関しては、物知りで頭の良いハーマイオニーがとりくんでも駄目だったのだから、今さらロンが手伝っても結果が変わるとは思えない。ただ、ハーマイオニーやハグリッドの気持ちだけはずっと楽になるはずだ。ロン、がんばれ!

3人がすぐにハグリッドを訪ねるとわたしは思ったのだが、そうじゃなかった。きびしい安全対策のため日が暮れてからハグリッドを訪ねるのは不可能だったので、「話ができるのは『魔法生物飼育学』の授業中しかなかった」と書かれている。
この設定はおかしいんじゃないか? ハーマイオニーがハグリッドから手紙を受け取ったのは土曜日のはず。翌日の日曜日の昼間にハグリッドの小屋へ行けばいいじゃないか。
そもそもこの物語、授業中に私語をする場面が多いように思う。生徒どうしの私語ならまだしも、ハリーたち3人がハグリッドとバックビークの裁判の話をするなんて、授業の方はどうなるんだ、と思った。
じっくり読んでみると、3人とハグリッドが話をしたのは、授業が終わってからだったので、考えすぎだったとわかったが。

この時、ドラコがハグリッドの悪口を言ったため、ハーマイオニーがドラコの横つらをはるというできごとが起こる。
ハリー目線の物語だから、ハーマイオニーが正義の味方のように書かれているけれど、わたしはドラコの方に共感する。
ハグリッドが泣き虫だというのは本当のことだし、彼が教師に向いているとはとても思えないから、「あいつが僕たちの先生だって!」というのも当たっている。
それに、ドラコはことばであざけっているだけなのに、それにことばで返さず暴力をふるったハーマイオニーに非があるとわたしは思う。

3人はいっしょに呪文学の授業に向かったが、部屋の入り口でハーマイオニーの姿が消えてしまう。呪文学のあと昼食、そしてハリーとロンが寮に戻ると、談話室でハーマイオニーが眠り込んでいた。
目をさましたハーマイオニーは、呪文学の授業を受けられなかったことをくやしがる。教室の入り口までいっしょだったのに、といぶかるハリー。この時点では、逆転時計のことはまだ読者にわからないけれど、ハーマイオニーがなにかの魔法を使っていて、そのせいで突然消えたり、同時に行われる複数の授業に出たりできるのだと見当がつく。

占い学では、水晶玉の授業が始まる。
トレローニー先生が、ハリーの水晶玉に死神犬グリムが見えると言い出したのをきっかけに、トレローニーとハーマイオニーが口論を始め、ハーマイオニーは授業の最中に教室を出ていく。
この場面では、わたしはハーマイオニーに拍手をしたくなった。仮にトレローニーが本物の予言者で、生徒の死を本当に予知したとしても、それを軽率に口に出すようでは教師失格だ。まして、彼女の予言の大部分はでたらめなのだから。
「賢者の石」でマクゴナガル先生は、トレローニーが毎年生徒のひとりの死を予言したが誰も死んでいない、と言っていた。トレローニー本人は、自分の予言がはずれたという自覚があるのだろうか? それにしてはいつも自信満々だけど… どうにも不思議な人だ。