ハリー・ポッターとアズカバンの囚人(第15章後半)

イースター休暇には、どっさりと宿題が出た。
「ロンはバックビークの控訴の準備を引き継いで、自分の宿題をやっていない時間には巨大な本にとりくんでいた」「……などを夢中でよみふけり……」と書かれているのがおもしろい。決して勉強好きじゃないはずのロンが、ハグリッドのために資料を必死で読んでいるのだ。

ハリーは宿題のほかに、クィディッチの練習や作戦会議に追われた。この章で、はっきり「リーグ戦」ということばが出てくる。シーズンごとに全試合の描写があるわけではないので、これまで、トーナメントなのかリーグ戦なのか、わたしにはわからなかったのだ(わかった人もおられると思うが)。
「グリフィンドールが最後に優勝杯をとったのは、伝説の人物、チャーリー・ウィーズリーがシーカーだったときだ」と書かれている。「賢者の石」でロンがハリーに家族の話をした時、チャーリーはクィディッチのキャプテンだったと言っていた。その時点ですでに卒業していたから、ロンとは7歳以上離れていることになる。シーカーというポジションは、この章で初めて出てきたと思う。

試合の朝、早くに目を覚ましたハリーは、窓の外にクルックシャンクスがいるのを見た。そばに黒い大きな犬がいる。ハリーがこの犬の姿をはっきり見たのはこの時が初めてだろう。マグノリア・クレセント通りでは、目だけしか見えなかったから。
(追記:9章のハッフルパフ戦の時には客席のいちばん上にいたのをハリーが見ている。この時は全身が見えたが、一瞬だった)

試合が始まった。審判はいつもどおりフーチ先生、解説はいつもどおりリー・ジョーダン。
審判はわかるが、解説は変だと思う。グリフィンドールが出る試合をグリフィンドール生が解説したら、公平な言い方をするはずがないのに。試合に出ていない寮から解説者を出すべきだと思う。たとえばグリフィンドールとスリザリンの試合なら、解説はハッフルパフ生かレイブンクロー生がやるべきだ。

この章では、試合経過がとてもていねいに描かれている。
最後にハリーはマルフォイの手を払いのけてスニッチをつかむのだが、この「手を払いのけて」が気になる。ルール違反かどうかはわからないが、フェアなやり方じゃないことだけは確かだ。
そして、勝利が決まった時のチームメートの反応や、グリフィンドール生の喜びも細かく描写されている。いつも冷静なマクゴナガル先生の感動ぶりも印象に残る。

これまでも、ハリーが勝った試合はあったし、寮杯を獲得したこともあった。、しかし、グリフィンドールがクィディッチ優勝杯を得たのは、ハリーが入学してからこの時が初めてなのだ。
優勝杯はどこに飾られるのか? 談話室か? 実はマクゴナガル先生の事務室というのが正解。それがわかるのは、「不死鳥の騎士団」19章。「わたしはクィディッチ優勝杯が自分の部屋にあることにすっかり慣れてしまいました」というマクゴナガルのせりふがある。