ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団(第19章前半)

「ライオンと蛇」という章タイトルを見たとき、何のことだかわからなかった。蛇がスリザリンの象徴だという知識は頭の中に残っていたが、グリフィンドールの象徴がライオンだということを忘れていた。この章は、グリフィンドールとスリザリンのクィディッチの試合の話が中心なのだ。
ただ個人的には、クィディッチのことが書かれている部分をあまり好きではない。スポーツとして不自然すぎるルールが多いので、このスポーツ自体に好感が持てない。
それよりも、DAの練習の話の方が楽しい。

各寮のクディッチの練習日と重ならないDAスケジュールを決まった曜日に設定するのは不可能だったと書かれている。おそらく、集まるたびに次の練習の日を決めていたのだろう。
間もなくハーマイオニーは、練習日の急な変更があった時に全員に同時に知らせる方法を考え出した。偽のガリオン金貨をつくり、金貨の鋳造番号が彫られている位置に、日付が表示されるようにした。ハリーが持っている金貨の日付を変えると、全員の金貨が熱くなって、ハリーの金貨と同じように日付が変わる。ハーマイオニーは、「炎のゴブレット」で知った闇の印をヒントに考案したのだという。
ここでハーマイオニーのせりふに「それを鋳造した小鬼を示す続き番号」とあるのがおもしろい。魔法使いが使う貨幣は、ゴブリンが作っているのだ。

この魔法はNEWTレベルだと、テリー・ブートが感心する。それだけ頭がいいのに、どうしてレイブンクローに来なかったのかと。実は組分け帽子がレイブンクローに入れるかどうか迷って、最終的にはグリフィンドールに入れたと、ハーマイオニーが答える。
公式サイト Pottermore によると、組分けに5分以上かかる生徒を「組分け困難者」と呼び、ハーマイオニーはあてはまらないけれど、それに近い時間がかかったという。
ところで、テリー・ブートはストーリーにからまない生徒だが、「賢者の石」の組分け場面ですでに登場している。

ゴールキーパーのロンは、猛練習していたし、実際に上達していた。
しかしロンには精神的な面で弱点があることを、キャプテンであり友人でもあるハリーは知っていた。スリザリンの生徒が「ウィーズリー、医務室のベッドは予約したか?」などとロンをからかう。ドラコはロンを見ると、クアッフルを取り落とす真似をして見せる。そのたびにロンが動揺しているのがはっきりわかった。

11月になり、試合の日が来た。
ロンは青ざめていた。朝食をまったく食べられないということが、日頃の食いしん坊ぶりが何度も描写されているだけに、ことの深刻さを表している。
スリザリンの生徒たちが王冠型のバッジをつけていた。「ウィーズリーこそ我が王者」と書かれている。もちろん、からかいの意味だ。さいわい、ロンはそれを見る余裕もなかった。
「賢者の石」の段階ですでに不思議だったのだが、クィディッチ・チームにはなぜ補欠をおく習慣がないのだろう。話をおもしろくするためかもしれないが、原作者がスポーツ一般について無知だったのではないかと、わたしは疑っている。

審判のマダム・フーチがホイッスルを鳴らし、試合が始まった。
解説はまたしてもリー・ジョーダンだ。これも話をおもしろくするためだとは思うが、グリフィンドールが出ている試合の解説者をなぜグリフィンドールから選ぶのかが理解できない。グリフィンドール対スリザリンの試合なんだから、解説はハッフルパフ生かレイブンクロー生にやらせるべきでは?

スリザリン陣営から、歌声が聞こえた。
「ウィーズリーは守れない」「ウィーズリーの生まれは豚小屋だ」などという歌詞だった。どんなメロディーかは書かれていないが、何かよく知られた歌の替え歌だったのだろう。
原文では韻を踏んでいるが、これを日本語に移すのは不可能だから、この日本語訳はやむを得ない。

ここでハリーがロンを心配するのは当然だが、スニッチを探すことを忘れてしまってアンジェリーナに叱られるのはいただけない。何か気になることがあるとほかの大切な用件を忘れてしまうハリーのくせが、ここでも描写されている。

ロンが何度も防衛に失敗し、得点が40対ゼロになったとき、ハリーはやっとスニッチを見つけた。ドラコとの必死の競争になり、ハリーはあやういところでスニッチをつかんだ。
ともかく勝った。
しかし、騒動はそのあとで起こった。