ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団(第18章後半)

「ドビーはハリー・ポッターをお助けしたいのです」
そう言うドビーに、ハリーは「28人が防衛術を練習できて、先生に見つからない場所を探している」と打ち明ける。
「ドビーはぴったりな場所を知っております」と即答するドビー。屋敷妖精の間では「あったりなかったり部屋」とか「必要の部屋」とか呼ばれているという。ウィンキーが酔ったとき、その部屋に入ると妖精サイズのベッドと酔い覚まし薬があった。フィルチが掃除用具が足りなくて困ったとき、この部屋で見つけた。つまり、その時々に欲しい物が出現する、魔法の部屋なのだ。

ここでハリーは去年のクリスマスのとき耳にしたことを思い出す。
「炎のゴブレット」23章、クリスマス・パーティの席で、ダンブルドアがカルカロフに話していた。トイレを探していたとき見知らぬ部屋に迷い込んだが、そこにはおまるのコレクションがあった。もう一度行ってみたときには、部屋はあとかたもなかった、とダンブルドアは言っていた。

その部屋を知っている人はほとんどいない。たいていはたまたま出くわして、二度と見つからない。しかしその部屋は存在していて、呼びかけられるのを待っている。
ドビーはそう話す。
屋敷妖精がよく知っていて、魔法使いは知らない。そういう部屋があったのだ。
もし、「秘密の部屋」の時期にハリーとドビーが出会っていなかったら、そしてドビーが自由の身になっていなかったら、ハリーはこの部屋を知らずじまいになり、防衛術を教える場所も見つかっていなかったことになる。
ハリーはその部屋の正確な場所と、部屋を呼び出す方法をドビーに教えてもらった。

ハリー、ロン、ハーマイオニーが手分けして「今夜8時、8階の『ばかのバーナバス』の絵の向かい側に」と、メンバー全員に伝えるのに半日かかった。
そして7時半、3人は約束の場所に行った。ドビーに教えられたとおり、「なぜこの部屋が必要か」ということに気持ちを集中させながら、壁の前を3回往復した。すると壁だったところに扉が出現していた。
中に入ると、クッションがたくさん、防衛術の本が何冊も、そして敵鏡や警報器などが備えられていた。

メンバーが次々入ってきた。みんな部屋の存在におどろいている。フレッドは以前この部屋に来たことがあるが、その時は単なるほうき置き場だったという。
ハーマイオニーが、リーダーを正式に選出することを提案し、当然ながらハリーが選ばれた。次にハーマイオニーは、このグループの名前をつけることを提案した。チョウが Defence Association という名前を提案し、DAの略称で呼ぼうと言う。ジニーが、DAならダンブルドア軍団だと言い出し、結局ダンブルドア軍団が名前になった。

練習が始まった。最初にとりくんだのはエクスペリアームスだった。これまでの経験で、戦いにとても役に立つ呪文だと、ハリーは実感していたのだ。ふたり一組にして練習を始め、ハリーはみんなの呪文を見てまわり、必要な助言をした。

気がつくと9時10分だった。夜、寮の外を歩くのが許されている時間は9時までだ。ハリーは生徒たちを3人か4人のグループにして、順番に部屋の外へ出した。そして、忍びの地図を広げ、全員が寮に戻るのを見届けた。
ここで「ハッフルパフ生は厨房に通じているのと同じ地下の廊下へ、レイブンクロー生は城の西側の棟へ、そしてグリフィンドール生は『太った婦人』の肖像画に通じる廊下へ」と描かれている。
忍びの地図には、寮そのものは描かれていないのだ。寮に通じる廊下の途中までだけだ。

全員が寮の近くまで戻ったのを地図上で見届けたハリーたち3人は、必要の部屋から出た。3人の目の前で、扉は石壁に戻った。