ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団(第18章前半)

シリウスと話した翌日の呪文学の時間、ハリーとロンとハーマイオニーは昨夜のことを話し合っていた。
「人や物がさかんに動いているので、盗み聞きされる危険性はほとんどなかった」と書かれているが、不自然だと思う。いくらまわりがやかましくても、またガサガサした雰囲気であっても、会話をかわしていれば同じ部屋の誰かに聞かれてしまうことはいくらでもありそうなのに。
だいたいハリーたちは、授業中のおしゃべりが多すぎる。移動中の廊下でとか昼休みの戸外で話せばいいのに、と思うシーンが多い。

14章でハリーの手紙をフィルチが読もうとしていたことを、ハーマイオニーは思い出している。あれはアンブリッジの差し金だった。ハリーの手紙を読む口実として、「ハリーが糞爆弾を注文している」という偽の情報を与え、フィルチを差し向けたのだと。それがうまくいかなかったので、今度は直接ヘドウィグを襲い、手紙を奪おうとしたのだ。マグルが空を飛ぶ鳥を襲う時には銃を使うが、魔法使いには銃の役目をするような何かの呪文があるのだろう。

この授業のあと「外は土砂降りなので、生徒たちは休憩時間内も場内に留まることを許された」とあり、驚いた。休憩時間は原則として外へ出なければならない決まりがあったのか?

グリフィンドール・クィディッチチームのキャプテン、アンジェリーナが、チーム再結成を許可されたと知らせにきた。マクゴナガルに直接訴えたのだという。「マクゴナガルはダンブルドアに控訴したのだと思う」と書かれているが、こんな場面で「控訴」なんて訳語を使うのは変だ。原文の単語は appeal だから、「頼んだ」でも「訴えた」でも十分のはずなのに。
しかし、アンブリッジは次の手を考えていたことが、次の章でわかる。

再結成の許可が出たチームは、さっそく練習を始めた。激しい雨の中だった。
練習のあと、フレッドとジョージはガニ股で歩いていた。開発中の「発熱ヌガー」の副作用で、下半身にできものが生じていたのだ。
更衣室で、ハリーは傷痕のするどい痛みを感じた。
ヴォルデモートは、たぶんずっと遠くにいる。でも、傷痕が痛んだのは、ヴォルデモートが怒っているからだ。ハリーはそうつぶやいた。直感でわかったことだった。彼は何かをさせたがっている。でも、うまくいかない。
ハリーは時々、優れた直感力を発揮する。「秘密の部屋」で日記を破壊した時もそうだった。
前巻でヴォルデモートが復活したので、ハリーは彼の感情を知ることができるようになった。この能力は発達していき、ヴォルデモートが見る光景をハリーも見る。最初は夢の中で、後には目覚めている時でも見るようになる。

その夜、談話室で眠ってしまったハリーは、窓のない廊下を進んでいる夢を見た。何回目なのだろう?
第1章ですでに「長い暗い廊下があり、廊下の先はいつも行き止まりで、鍵のかかった扉がある」夢を思い出している描写がある。あとでわかるが、これはヴォルデモートが思い浮かべている光景なのだ。そして第7章の魔法省の場面で、その廊下が実在しているのを目撃するが、尋問の直前でいっぱいいっぱいだったハリーは気づかない。夢に見る廊下が地下9階の神秘部と同じものだと気づくのは、24章の閉心術の訓練中だ。

夢の中の扉に手が届く寸前、ハリーは起こされる。
起こしたのはドビーだった。ヘドウィグの怪我が回復したので、ハリーに返す役目を自分から引き受けたのだ。
ドビーは数えきれないほどのソックスを重ねて履いていた。ハーマイオニーがせっせと編んでいる靴下や帽子は、全部ドビーが取っていたのだ。他の屋敷妖精は、帽子を拾わされるのを嫌がって、グリフィンドール塔の掃除をしなくなっていた。
ウィンキーは今も飲んだくれていることも、ここでわかる。

そして、ドビーが訪ねてくれたことが、防衛術訓練の場所に関する難問を解くことになる。