ハリー・ポッターと謎のプリンス(第14章)

第二回の個人授業の明くる日、最初の授業は薬草学だった。ハリーは温室へ行く途中、ハーマイオニーとロンに、孤児院時代のトム・リドルの話を聞かせた。
薬草学の授業の描写は楽しい。魔法植物の扱い方などは本筋にあまり関係ないが、そういう細かい描写もこの物語の魅力のひとつだ。ネビルの薬草学での優秀さも、さりげなく語られる。

スラグホーンがクリスマスパーティにハリーを招きたがっているという話題になる。ひがみやのロンは、自分が呼ばれていないくやしさから、さんざんパーティの悪口を言う。ロンを招待するつもりだったハーマイオニーは、へそをまげてしまう。この巻のロンとハーマイオニーの意地の張り合いは、ここが最初かな?

今度はクィディッチでもやっかいごとが起こる。ケイティ・ベルが入院中なので、ハリーはキャプテンとして代わりのチェイサーを選ばなければならない。選抜のときによりうまく飛んだディーンを選んだが、選ばれなかったシェーマスは不機嫌だった。
そして、練習のとき、ロンはうまくブロックができず、あせってデメルザ・ロビンズに怪我をさせた。
ジニーが「このヘボ」とどなり続ける。ジニーの性格の悪さがよくわかる。いちばん心が傷ついているのはロンのはずなのに、それにここでロンを責めたらますますプレーが荒れてチームのためにもならないのに。
怪我をさせられたデメルザが言うならともかく、ジニーが言っていいせりふではない。

このあと、ディーンとキスしていたところをロンにとがめられ、ジニーは反論する。ハリーもハーマイオニーもキスの経験があるのに、ロンだけが未経験だとあざけるのだ。
確かにロンの言い方も大人げなかったと思うが、ジニーのせりふは、相手の傷口に塩をぬりこむようなものじゃないだろうか。
わたしはこの章で、ジニーがすっかり嫌いになった。

ハリーは心の中でこっそり、ジニーとのキスを想像する。
ここでハリーが「ジニーはロンの妹だから、近づいてはいけない」と考えるのが、わたしには納得できない。ジニーとディーンがいちゃついているのを見てロンは腹を立てたが、それがシスター・コンプレックスのせいとは思えないからだ。
でも、ハリーはそう考えているのだろう。

ロンはどんどん気持ちが落ち込んでいき、ハリーの必死の努力にもかかわらず、まともなプレーができそうになかった。
ハリーは奇策を思いつく。魔法薬学の授業でほうびにもらったフェリックス・フェリシスを、ロンに飲ませようとしたのだ。いや、「飲んだと思いこませる」作戦だった。ハーマイオニーの目に入るところで、ロンの飲み物に薬を入れたふりをした。組分け帽子がハリーをスリザリンに入れようとしたのは、こういう狡猾さを見抜いていたからだろう。

対戦相手はスリザリン戦で、たまたま相手チームの選手2人が欠席、代理が出ることになった。ロンは幸運の薬のせいと思いこむ。

試合が始まった。審判はいつもどおりマダム・フーチ、スリザリンの新キャプテンはウルクハート。解説者はザカリアス・スミス、ハッフルパフのブロンドの少年だ。グリフィンドールに対していじわるな解説を始めた。
ロンは目を見張るような守りを見せた。ハリーの心理療法がみごと効いたのだ。精神面さえ安定すれば、よい腕前を見せられる彼なのだから。
試合は大差で勝った。
試合後、ジニーはほうきに乗ったまま、解説者のザカリアス・スミスの席につっこんだ。作者はこれを痛快なことのように書いているが、わたしは不愉快だ。確かに彼の解説はいじわるだったけれど、口でやったいじわるに暴力で返すのはよくない。

ロンとハリーが更衣室に残っていたとき、ハーマイオニーがやってきた。フェリックス・フェリシスを違法に使ったことをとがめに来たのだ。正義感の強いハーマイオニーにすれば、いくら自分の寮が勝ったからといって手放しでは喜べないのだ。
ハリーはフェリックス・フェリシスのびんを見せる。コルク栓はしっかりロウで封じてあった。

談話室に戻ると、祝賀パーティの最中だった。
ロンは部屋の隅で、ラベンダー・ブラウンと抱き合い、キスをしていた。それを見たハーマイオニーが外へ出ていった。ハリーが追うと、ハーマイオニーは誰もいない教室で腰掛けていた。
ここでハーマイオニーは、黄色い小さい小鳥を魔法で出している。魔法で生き物を作ることができるのだろうか? それができるなら、「死の秘宝」で食べ物が不足したときに、魚を魔法で出したりできるはずだ。おそらく魔法で出した小鳥は、レプラコーンの金貨のように消えてしまうのだろう。
そこへロンとラベンダーが出てくる。ハーマイオニーは小鳥たちに「襲え」と呪文をかけ、小鳥たちはロンをつついたりひっかいたりする。