ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団(第30章後半)

弟の話し相手になってほしい、というのがハグリッドの依頼だった。
「透明マントを着て、一週間に一度ぐれえかな、こいつとしゃべってやってくれ」
これまで遠回しな表現でしか言わなかったハグリッドの依頼が、やっと具体的になった。
ハリーはすでに約束してしまっていたが、ハーマイオニーはそこまで納得していなかった。しかしハグリッドはかまわず、眠っている弟を起こした。立ち上がると五メートルはあった。

「お前に友達を連れてきた」とハグリッドは弟のグロウプに言い、ハリーとハーマイオニーの名を教えたが、グロウプがそのことばを理解しているようには見えなかった。
それでもハグリッドは「これでよし」「今度ここに来るときには、こいつはおまえさんたちのことがわかる」と、ひと安心というような口調だ。
これはハグリッドの希望的観測に過ぎないと思えたが、グロウプが少なくともハーマイオニーの名を覚えたことは、33章でわかる。

森を出ようとしたとき、ハグリッドとハリーとハーマイオニーケンタウルスに会った。ケンタウルスのマゴリアン、ベイン、その他数人のケンタウルスだった。
(「四、五頭」と書かれているが、わたしは「頭」より「人」の方がいいと思う。馬よりずっと人間に近い存在だとおもうので)
ハグリッドとケンタウルスたちの間に険悪な空気が流れていること、フィレンツェのこととグロウプのことと両方が原因で、ケンタウルスたちがハグリッドに腹を立てていることがわかる。
もうひとつ、この時のやりとりでわかったことがある。ケンタウルスたちは、こどもを傷つけることはないというのだ。これが、32章でハーマイオニーの行動のヒントになる。

城へ戻ったハリーとハーマイオニーを、意外なできごとが待っていた。
クィディッチの試合に勝って、グリフィンドールが優勝したのだ。ロンがグリフィンドールの生徒たちに肩車されている。
ドラコがロンをからかうために作った「ウィーズリーはわが王者」の歌が、今はグリフィンドール生に歌われ、ロンをたたえる歌になってしまったという流れがおもしろい。
ハリーとハーマイオニーは、ハグリッドの依頼を明日までロンに言わずにおこうと決めた。