ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団(第30章前半)

フレッドとジョージの逃走のあと、生徒たちのはじけぶりの描写は楽しい。本筋にあまり関係のないこういう細かい描写がていねいなのも、この作品の特長のひとつだ。
中に「誰かがこっそりアンブリッジの部屋にニフラーを忍び込ませ…」と書かれているが、その誰かがリー・ジョーダンだったことが、次の章でわかる。
双子とリーはいつもいっしょに行動していた。双子がホグワーツに見切りをつけたことはすでに聞かされていただろうから、リーにとっては突然ではなかったはずだ。でも、双子がいなくなって寂しい思いをしたのは当然だろう。
クィディッチの場面では「リー・ジョーダンはフレッドとジョージがいなくなってからずいぶん元気をなくしていたが…」と書かれている。

双子の脱出を止めなかったことで、母親に叱られるのではとロンが心配する。
ハーマイオニーはいつもの理性的な分析で、「ダイアゴン横町にふたりの店があるなら、前々から計画していたに違いない」と説明。どうやって資金をつくったのか、気になっていると。
ハリーは、三校対抗試合の賞金をふたりにやったことを打ち明ける。

「クィディッチ・シーズンの最後の試合、グリフィンドール対レイブンクロー戦は、五月最後の週末に…」と書かれている。
シーズンが十一月に始まることは「賢者の石」ですでにわかっていたが、終わりが五月だということはここでやっとわかった。
ロンはさんざんな成績だったが、開き直っていた。
他人の心理を見抜くのが得意なハーマイオニーは「フレッドとジョージがいないほうが、ロンはうまくやれるかもしれないわ」と言う。結果はそのとおりになる。さすがだ。

解説はまたしてもリー・ジョーダンだった。
なぜ、グリフィンドールが出る試合をグリフィンドール生に解説させるのだろう? 試合に出ない寮の生徒に解説させれば、公平な解説になるだろうに。

試合が始まったばかりなのに、ハグリッドが観客席にやってきて、ハリーとハーマイオニーに「いっしょに来てくれ」と頼む。
みんなが試合に夢中になっている間に見せたいものがあるというのだが、ここは何だか不自然に思えた。おおぜいの生徒がいる見物席だから、ハグリッドがハリーを連れ出すところを当然みんなに見られているのに。

ハリーとハーマイオニーは、せっぱつまった様子のハグリッドに断りきれず、彼についていった。もしかするとふたりは、ロンの醜態をこれ以上見たくないと意識の底で思っていたのかもしれない。
ハグリッドは自分の小屋へ向かうように見えたが、そうではなく、小屋を通り越して森へ入っていった。
ハグリッドとのやりとりの中で、フィレンツェの話が出る。フィレンツェダンブルドアの頼みを引き受けたことで、ケンタウルスたちが激怒していること、そのためにハグリッド自身が森へ入ることも危険になっていることがわかる。

森の中に入っても、ハグリッドは目的をなかなか説明しない。遠回しに言うので、読んでいてイライラするほどだ。
自分がもうすぐ追い出されるだろう。外へ出ればダンブルドアの手助けができるし、グラプリー・プランクがいるからOWL試験は乗り切れる。
ハグリッドにしてはまともな発言だ。
ただ、ハリーたち三人に頼みたいことがあるというのだ。

「僕たち、もちろん助けるよ。何をすればいいの?」
何を頼まれたのかわからないまま、ハリーは言ってしまう。
さらに森の奥へ入っていくと、土塁があった。いや、土塁に見えたのは、眠っている巨人だった。

とぎれとぎれのハグリッドの説明は、読んでいてほんとにイライラするが、まとめるとこうだった。
巨人の住居に行ったとき、ハグリッドは自分の異父弟に出会った。弟は巨人の中では小柄なため、いじめられていた。ハグリッドはこの弟をホグワーツへ連れてくることにした。人のいない場所を夜に移動したため、マダム・マクシームより遅く、二ヶ月かかって戻ってきた。弟は英語が話せないし、自分の力もわかっていない。ハグリッドが傷だらけで戻ってきて、今も怪我が絶えないのはこの弟が、自分の力をわかっていないせいだと。

この弟の話し相手になってほしいというのが、ハグリッドの依頼だった。
フィレンツェが最初の授業のあとで「ハグリッドがやろうとしていることは、うまくいきません」と言っていた意味が、ハリーにはやっとわかった。
もっとも、フィレンツェの予言は結果的に当たらなかったが。