ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団(第31章前半)

ロンの活躍でグリフィンドールが勝ち、しかもこの試合で優勝が決まった。
「ロンは有頂天で、次の日は何も手につかないありさまだった。試合の一部始終を話したがるばかりで、ハリーとハーマイオニーは、グロウプのことを切り出すきっかけがなかなかつかめなかった」と書かれている。
こういうロンの幼さ、単純さは、随所で描写されている。「アズカバンの囚人」でシリウスがグリフィンドール寮に押し入った時とか、「炎のゴブレット」で人質になった時とか。

同じ話を数十回聞かされたあとで、ハーマイオニーはやっと切り出すことができた。
「あの、実は……ロン、(その場面を)見てないの」と。
ハグリッドに頼まれて、断りきれずクィディッチ競技場を離れたこと、ハグリッドが巨人をひとり連れて帰って森に隠していたことを聞き、ロンはあきれ返った。

六月に入った。学年最後の月で、五年生にとってはOWL試験の月だ。
OWLについて、この物語で初めて出てきたのはどこだろう。「炎のゴブレット」5章で、ロンとジニーが双子のOWL試験の成績を話題にしていたけれど、そこが初出じゃないような気もする。
生徒どうしで、一日の勉強時間が話題になるのは、リアル世界の学校と変わらないだろう。しかし、ドラコが「知識よりコネが大切」という話をするのは、ちょっと現実離れしている。世の中はすべて金とコネだという価値観の中で育ったのなら、ドラコは気の毒だ。

この章で、ネビルがつぶやく。
「ばあちゃんが、マーチバンクス先生にいっつも言うんだ。僕が父さんのようにはできがよくないって…」
ネビルの祖母は、他人の前でもネビルをこきおろすのだ。23章の病院の場面でも、彼女は同じようなせりふを言っていた。ネビルが萎縮してしまうのも無理はない。

試験が近づくと、精神集中や眠気ざましに役立つという怪しげな薬が流行した。この詳しい描写がおもしろい。また、誰よりも試験の成績を気にするハーマイオニーが、それにひっかからず見破っていくのもおもしろい。ハリーとロンはだまされたのだが。

大広間の外に、試験官たちがやってくるのが見えた。OWL試験の試験官は、ホグワーツの教師が務めるのではなく、校外からやってくるのだ。

二週間にわたる試験が始まった。
会場は大広間だが、いつもの大きなテーブルではなく、個人用の机と椅子が並んでいる。机の入れ替えは呪文ひとつでできるのだろう。机の上には裏返した試験用紙がある。最初の科目は呪文学だ。
「始めてよろしい」の声といっしょに、マクゴナガル先生が巨大な砂時計をひっくり返した。マグル界ならストップウォッチだが、魔法界は中世の文化をひきずっているから、砂時計やら羽根ペンやら羊皮紙やらが使われている。