ハリー・ポッターとアズカバンの囚人(第16章後半)

昼食後、ハーマイオニーはマグル学の試験に、ハリーとロンは占い学の試験にと分かれる。
占い学の試験は、生徒たちが部屋の外で列を作って待ち、ひとりずつ呼ばれて室内に入るというやり方。室内では、トレローニー先生の前で水晶玉を見て、何が見えるかを言うのだ。
パーバティーは、「いろんな物が見えたわ」と満足そう。パーバティーとラベンダーは日頃からトレローニー先生を崇拝していた。ロンは、何も見えなかったからでっちあげたという。
パーバティーのせりふは、どう解釈したらいいのだろう。実際にパーバティーには占い師の素質があって、何らかの予兆を見たのだろうか。それとも、トレローニーを信じてせいで幻影を見たのだろうか。彼女がうそをついているとは思えないし。

ハリーの番が来た。ロンが言ったとおり、水晶玉には何も見えなかったが、ハリーはヒッポグリフが見えるとうそをついた。
テストが終わってハリーが立ち上がったとき、トレローニー先生がトランス状態になった。いつもと違う太い荒々しい声で「ことは今夜おこる。今夜真夜中になる前、召使いは自由の身となり、ご主人様のもとに馳せ参じる。闇の帝王は、召使いの手を借り、再び立ち上がるであろう」と述べる。(元の文を短く要約した。)
そのあとトレローニー先生は我に返ったが、たった今自分が言ったことを覚えていなかった。

もしハリー・ポッターシリーズの中の人物になれるとしたら、ハリーたち3人組のどれかでもいいし、ラベンダーとかゴイルとかのうざったい脇役になってもかまわない。でも、トレローニー先生にだけはなりたくない。すごい予言をする能力があるのに、その予言を自分で覚えていないなんて、気の毒すぎる。登場人物の中でいちばんかわいそうな人だと思う。

談話室に戻ると、ロンとハーマイオニーがいた。ハグリッドから手紙が来たばかりだった。
「控訴に破れた。日没に処刑だ。おまえさんたちにできるこたぁなんにもねえんだから、来るなよ」と書かれていた。それに、ブラック対策の安全措置のために、日没前後に外に出ることはできない。そこで透明マントを使うことにした。マントは14章でハリーが隻眼の魔女の通路に隠したままになっている。ハーマイオニーが取り戻しに行った。ハリーがマントに隠れてホグズミードに行くことを非難していたハーマイオニーだが、ヒッポグリフの処刑はそれより重大だと考えたのだ。

3人はマントに隠れて、ハグリッドの小屋を訪ねた。
そこで3人は意外な物を見る。クルックシャンクスに殺されたはずのスキャバーズだった。
あとで考えれば、スキャバーズはハグリッドの小屋にひそむことで、ハリーの動向をさぐっていたにちがいない。

ロンがスキャバーズを捕まえている時、窓の外にファッジたちが見える。年寄りの魔法使い、死刑執行人マクネア、ダンブルドアがいっしょだ。
ハグリッドは3人に、城へ戻るように言う。いつもこどもみたいなハグリッドだが、この時の態度は立派だ。
3人はバックビークがいるのと反対側に出て城へ向かう。ロンはスキャバーズが暴れて噛み付こうとするのに閉口している。そこへ、シュッ、ドサッという斧の音が聞こえる。バックビークの首が切られた音、とハリーたちも読者も信じてしまう。
21章まで読むと、「死刑執行人がかんしゃくを起こして斧を柵に振り下ろしたらしい」と書かれている。映画ではかぼちゃを斧で割った音になっている。たしかに、柵よりはかぼちゃの方がそれらしい音が出るだろう。