ハリー・ポッターとアズカバンの囚人(第19章前半)

ロンを捕らえて地下道に入り、叫びの屋敷まできたシリウス・ブラック。それを追ってきたハリーとハーマイオニー。そこへやってきたルーピン。
学生時代にハリーの父やシリウスと友人だったこと、自分が狼人間であり、シリウス・ジェームズ・ピーターが動物もどきになったこと、さらにスネイプも同学年だったことをルーピンが説明する。
そこへもう一人が出現。スネイプだ。

スネイプがやってきた経過はこうだ。スネイプがいつもの薬をルーピンの部屋に持っていくと、ルーピンは留守で地図が机の上に広げてあった。その地図で、ルーピンが暴れ柳の通路に入るのを目撃。つねづねルーピンを疑っていたスネイプは、ルーピンがシリウスに連絡をとるために地下道に入ったと考えて、シリウスを捕まえたいとやってきたのだ。

スネイプが術でルーピンを縛り上げ、シリウスに杖を向ける。
ハリーはまだ、誰を信じていいかわからない。ロンも同じだ。ハーマイオニーもわけがわからない表情ではあったが、ルーピンやシリウスが誤解されている可能性もあると思った。
このすぐあと、ハリーたちがスネイプに反抗したのはなぜだろう? まだルーピンやシリウスを信用できないでいたのに。日頃スネイプを嫌っていたからか? ルーピンが良い教師だと思っていたからか?
ともかく、勝利を確信していたスネイプに、ハリーたち3人が攻撃をしかけ、スネイプは気絶する。ここでスネイプが気絶して、スキャバーズがピーターに戻る場面を見損ねたために、シリウスとルーピンに関する誤解が解けないままになる。

ところで、スネイプもピーターも、ヴォルデモートの部下だったはずだ。それなのに、ピーターがヴォルデモート側に寝返ったことをスネイプが知らないのは変に思える。
「炎のゴブレット」30章、憂いの篩の中でハリーが昔の裁判を見たとき、カルカロフは「我々は仲間の名前を全部知ることはありませんでした。全員を把握していたのはあの人だけでした」と言っている。この証言は、「炎のゴブレット」で墓場に死喰い人が招集されるエピソードと矛盾する。ヴォルデモートは、闇の印で手下を呼び集める場合、部下をいくつかの組に分けて別々に招集していたのだろうか?
たしかにヴォルデモートの性格なら、全体を掌握するのは自分ひとりでよいと考えるのが自然だけれど。

ピーターがネズミに化けてホグワーツにいることを、シリウスがどうして知ったのか。
ここで、第一章の伏線が生きてくる。ウィーズリー家が宝くじを当て、エジプト旅行にでかけたという新聞の記事にスキャバーズが映っていた。
そして、第10章の「三本の帚」の場面。ファッジ大臣がアズカバンを視察した時、ファッジが持っていた新聞をシリウスが欲しがったと言っていた。初めて10章を読んだときには、ここが重要な伏線になるとは思いもしなかった。

11章ではロンが、ピーターの体のかけらの中でいちばん大きいのが指一本だったと言っていた。
そして、スキャバーズには指が一本ない。
それに気づいたルーピンは真相を察した。シリウスが説明を加える。ピーターは、まわりにいた人に聞こえるように大声で「シリウス、お前がジェームズとリリーを裏切った」とさけぶなり道路を吹き飛ばし、まわりにいたマグルたちを殺して、自分はすばやくネズミの姿で下水道へ逃げた。

ここを読んで思う。ピーターは決して、マクゴナガルが思っていたような劣等生ではない。
自分の指を切るなんて、勇気がなくちゃできない。まんまとシリウスに罪を着せ、魔法界全体をあざむいた巧みさは、ピーターが人並み以上の知恵を持っていることを示している。
知恵も勇気も決断力も持ち合わせているのに、それを悪いことばかりに使ってしまったのがピーターだった。