ハリー・ポッターとアズカバンの囚人(第20章前半)

叫びの屋敷から、彼らは地下道を通って学校へ戻る。
ペティグリューは手錠をかけられ、手錠は片手ずつルーピンとロンにつながれていた。
シリウスは気を失ったままのスネイプを宙づりにして運ぶ。
シリウスは、遠慮がちにハリーに提案する。容疑が晴れたら、自分といっしょに暮らしてくれないかと。ハリーにとっては願ってもない提案だった。安全のためにダーズリー家にとどまる必要があることを、この時点ではハリーもシリウスも知らない。

ところで、この場面で不思議なことがある。
一行は、なぜ歩きにくい地下道を通ったのだろう。ホグズミードからホグワーツに行く道路があるはずだし、そこを通っても差し支えなかったのでは?
誰かに見とがめられても、ちゃんと説明できる状況だったのだから。

さて、トンネルの出口に着いた。久ルックシャンクスが柳の木のこぶを押してくれた。みんなは建物のある方向に向かって校庭を歩いた。
その時、雲が切れて月の光が射した。ルーピンの変身が始まった。狼男の伝説についてはよく知らないけれど、月光を直接浴びることで変身するのだろうか? それなら、満月でも雨の日は大丈夫ということになる。あるいは、窓のない室内に閉じ込めておけば変身はできないということになる。そんな簡単なことで、変身を防げるのだろうか?
「あの薬を今夜飲んでないわ! 危険よ!」と叫ぶハーマイオニー。すぐに状況を把握したのはさすがにハーマイオニーだと思う。ルーピンは地図にピーターが出現したことで頭がいっぱいで、薬のことを忘れて飛び出してしまったのだろう。

シリウスが犬に変身し、狼にとびかかってハリーたちから狼を遠ざけようとする。
その時ピーターが、ルーピンが落とした杖にとびつき、ロンとクルックシャンクスを攻撃する。ハリーはピーターに向けて武装解除の呪文をかける。ピーターの持っていた杖が飛んだ。しかしピーターはすばやくネズミに変身、手錠ははずれた。ピーターの逃げた方向へ、犬の姿のシリウスが走る。
この場面、とっさに武装解除呪文を使ったハリーは偉いと思う。その一方で、ピーターもなかなかやるじゃないかと感心している。ルーピンが変身する可能性をピーターが知っていたかどうかはわからない。しかし、ルーピン自身にもハリーたちにも思いがけない展開だったこの機会をとっさに捕らえ、ルーピンの杖をうばって相手を攻撃、杖を飛ばされたら今度は変身して逃れるという、とっさの決断力や行動力はたいしたものだ。彼はやっぱり、マクゴナガルが思っていたような劣等生ではない。

映画では、ネズミから人間になる時にちゃんと服を着ていた。しかしネズミになるときは服を置いて変身している。これは理屈に合わないと思う。服ごと変身するなら、服からネズミが抜け出す演出は変だし、服は変身に含まれないというなら、ネズミから人間になった時は裸体であるべきだろう。
原作の動物もどきの設定は、衣類や眼鏡もいっしょに動物になるというものだ。マクゴナガルが猫になるときも、リータがコガネムシになるときも、眼鏡ごと変身し、眼鏡は猫なり虫なりの体の模様の一部になっていた。もっとも、この巻ではリータはまだ登場していないが。