ハリー・ポッターと炎のゴブレット(第2章)

ハリーは目を覚まして、今の夢を振り返った。
いや、単なる夢ではない。そしてハリー自身も、これが単なる夢ではないことを知っているようだ。
ヴォルデモートと心がつながっていることを、ハリーはまだ知らない。しかし一年生の時すでに、ヴォルデモートが近くにいると傷跡が痛むという経験をした。今度も夢と同時に傷跡がひどく痛んだから、現実のヴォルデモートと今の夢は、何かの意味でつながっているはずだ。

夢の中でハリーは、老人が殺されるのを見た。読者はそれがフランク老人だと知っているが、ハリーにとっては未知の人物だ。死の呪文をとなえたのはワームテールだろうか、それともヴォルデモート自身か? のちの墓場の場面で、フランク老人はヴォルデモートの杖から出てくるので、殺したのはヴォルデモートなのだろう。この時のヴォルデモートが、不完全な肉体を持っていたのはあとでわかる。不完全であっても、杖は使えたのだ。アバダケダブラは無言呪文でとなえたと思われる。

この章では、ハリーのこれまでが手際良く語られる。「秘密の部屋」でも「アズカバンの囚人」でも感じたことだが、各巻の第1章または第2章で過去の復習をさせてくれる書き方はとてもうまいと思う。処女作とは思えない要領の良さだ。ハーマイオニーやロンについてもちゃんとこの章で説明されている。

「アズカバンの囚人」の夏休みには、バーノンに杖や教科書をとりあげられ、ハリーは物置の鍵をこじ開けて教科書を取り出し、かろうじて宿題をした。
この巻では、そういういじわるはされていない。「アズカバンの囚人」の最終章で、テレビで報道された殺人犯が自分の後見人だと伯母夫妻に言ったからだ。
そんなことを言えば、伯母夫妻の魔法界に対する偏見がますます強まるのに、とわたしは思ったが、バーノンはハリーの計略どおり、ハリーを恐れるようになり、魔法の学用品を取り上げることはなくなった。

シリウスからの手紙は二度届き、二度とも「派手な色をした大きな南国の鳥が持ってきた」と書かれている。つまり、シリウスはイギリスを離れてアフリカあたりに隠れているのだろう。
派手で大きい南国の鳥って何だろう? コンゴウインコかと思ったが、コンゴウインコはアメリカ大陸の鳥だから、生息地が遠すぎる。該当しそうな鳥が思いつかない。

ハリーはシリウスに手紙を書き、傷跡のことを知らせることにした。
それにしても、魔法界の郵便は便利だ。相手の所在がわからなくても、手紙を運ぶフクロウが宛先を探し出してくれるのだから。
このしくみ、ちょっと携帯電話や電子メールに似ている。相手の所在がわからなくても連絡可能という意味では。