ハリー・ポッターと炎のゴブレット(第5章)

「ぼやけた暖炉の影が次々と矢のように通り過ぎ、やがてハリーは気持ちが悪くなって目を閉じた。しばらくして、スピードが落ちるのを感じ…」
この記述を読むと、煙突飛行ネットワークを使う移動は、姿あらわしのような瞬間移動ではなさそうだ。少なくとも数分はかかるという印象を受ける。それでも、列車や自動車による移動よりはるかに速いのだろう。
ホグワーツへ行く生徒たちは、なぜ半日以上かかる列車を利用するのだろう? 煙突飛行ネットワークで行くか、つきそい姿くらましで行く方がずっと速いだろうに。
生徒達がホグワーツ特急を使うことや、一年生だけがボートで池を渡ることは、千年前からの「伝統」となっているのだろう。しかし、その伝統が始まった時には、何らかの具体的な理由があったはずだ。
ホグワーツ特急は、魔法使いの子もマグル生まれの子も同じ時間を列車で過ごすことに意義があるのではないだろうか。午前11時に乗り込んで夜ホグズミード駅に着くまで、マグル生まれのこどもたちは魔法使いのこどもたちと交流することで、心の準備ができる。
しかし、一年生がボートで池を渡る理由はわからない。二年生以上と同様「馬なし馬車」で行っても不都合はないはずだが。

ハリーがウィーズリー家に着いたとき、フレッドが「やつは食ったか?」と尋ねた。やはりわざとアメを落とし、ダドリーが食べるように仕向けたのだ。

ハリーはここで初めて、ロンの兄のビルとチャーリーに会う。チャーリーは指にも腕にもやけどの跡があった。ドラゴンを扱うしごとはけっこう危険なのだろう。
ビルについては「かっこいい」「服装は、ロックコンサートに行っても場違いの感がしないだろう」と書かれている。ダーズリー家でしいたげられていたはずのハリーがなぜロックコンサートを知っているのか、変だと思ったが、テレビで見たのだろうと脳内補完した。
ともかくハリーはこれで、ウィーズリーきょうだい全員に会えたことになる。

フレッドとジョージがわざとアメを落としたことをアーサーは見破り、ふたりを叱りつける。
「こういうことがマグルと魔法使いの関係を著しく損なうのだ!」と。
しかしアーサー君、そもそも、マグルの暖炉を使って移動を試み、出られないからとその暖炉を壊すという行動自体が「マグルと魔法使いの関係を著しく損なう」ことじゃないんですか? それにフレッドとジョージを連れていけばロクなことをしないと、父親なら予想できるはず。今回のことはあんたに非がありますよ。
フレッドとジョージは「あいつがいじめっ子のワルだからやったんだ」と言い訳し、ハリーもそれに同調していたけれど、これにも賛成できない。いくらダドリーが悪い子でも、魔法を使えない相手に魔法でいじわるをするのは卑劣きわまると思う。

ウィーズリー家にはハーマイオニーも来ていた。
ハリー・ロン・ハーマイオニー・ジニーの4人は、ロンの部屋へと移動しながら話をする。
フレッドとジョージはいろいろないたずらおもちゃを発明していて、それを「ウィーズリー・ウィザード・ウィーズ」という商標で売っているという。母モリーが双子の部屋を掃除していて注文書の山を見つけたというのだ。
15歳にもなって母親に部屋を掃除してもらうというのは変だとも思うが、未成年は学校外で魔法を使ってはいけないから、親が掃除する方が合理的なのだろう。
モリーはかんかんに怒って注文書を焼き捨てたらしい。双子はいたずら専門店をやりたいと主張して、意見が対立したままだという。
このエピソードが、この巻の最終章に出てくる懸賞金とつながってくる。

人数が多いので、庭で夕食をとることになった。
その夕食の場で、パーシーの上司である国際魔法協力部部長のクラウチ、魔法ゲーム・スポーツ部のルード・バグマンの名前が出る。ワールドカップのチケットをとってくれたのはバグマンらしい。そして、バーサ・ジョーキンズが一ヶ月間行方不明だということも話題になる。
第1章のヴォルデモートとワームテールの会話に出てきたバーサだ。

そして話題はワールドカップに移る。
ブルガリアチームにビクトール・クラムといういい選手がいるが、全体としてはアイルランドの方が強いこと、イングランドウェールズスコットランドが別々のチームを構成していることがわかる。このことはストーリーに直接関係はないが、現在のイギリスの状況を反映していておもしろい。

明日は夜明け前に起きるから早く寝なさい、というモリーのことばで、夕食が終わる。